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第618回

日本シイエムケイ(株) 代表取締役社長 石坂嘉章氏


「我慢の1年も覚悟」
新規事業を4割強へ

2025/3/21

日本シイエムケイ(株) 代表取締役社長 石坂嘉章氏
 車載基板、なかでも走行安全やパワートレイン系などの重要保安領域に注力する日本シイエムケイ(株)(東京都新宿区)。国内の車両認証問題や世界的なEV市場の減速を受け事業運営にも厳しさが増しつつある。タイ新工場の本格稼働時期も若干、先送りになりそうだ。より安定的な成長を目指すうえで、新規事業の立ち上げが急務となる。同社代表取締役社長の石坂嘉章氏に足元の市況や今後の事業展開を聞いた。

―― 2024年度の通期業績を再度修正しました。
 石坂 24年11月に公表した売上高について、920億円から950億円に引き上げた。営業利益は38億円のまま据え置いた。やはり国内での車両認証問題を背景とした生産台数の伸び悩みや、欧米などでのEV減速が響いた。受注は依然低調だが、付加価値の高い走行安全系が順調に伸長しており、売り上げが前回予想値を上回る見通しとなった。24年10月に入ってから国内生産は回復基調にあり、足元も改善傾向が続く。

―― 25年度の事業環境はいかがですか。
 石坂 現在、顧客関係先と基板需要のヒアリングを行っており、最終的な予算の組み上げ作業に入っている。全体的に不透明感が強く「我慢の1年」となりそうだ。しかし、ADASや新機能を追加した新規案件が引き合いとして出始めている。これを取りこぼすことなく受注につなげたい。統合型ECUなど新たな動きもあるなか、基板の大型化や大規模CPUを搭載するECU基板も必要になってきており、3~4段のビルドアップ基板のニーズも出てきている。25年後半からの回復に期待しており、プラス成長を目指す。

―― 投資も高水準です。
 石坂 24年度は195億円(前年度159億円)を見込んでいる。タイ新工場など8割強を海外の投資に回す。24年4~12月期までに国内には13億円、1~9月までに海外には134億円の合計147億円を充当した。

―― タイ新工場の稼働は。
 石坂 当初、24年秋の稼働を計画していたが、市況悪化に伴い本格稼働の時期を見極め中だ。現在、認定取得に向けた活動を行っている。いつでも垂直立ち上げができるよう準備は整えておく。

―― 中国にも生産拠点を展開しています。
 石坂 中国では東莞地区と無錫地区の2拠点を運営している。前者は貫通基板の生産、後者はビルドアップ基板などの高精細基板を量産している。無錫工場では、より高密度化の流れに対応できるようプロセスの高度化を図っている。ワークサイズの大判化にも対応、生産性の改善に努めている。新ラインを活用した製品納入も開始している。中国市場での現地ニーズをしっかり見定め、最新設備を含む高度化投資も進めている。

―― 車載基板の売り上げが突出しています。より安定経営への布石は。
 石坂 確かに車載基板の比率が高い。現状8割強を売り上げているが、中長期的には車載以外の比率を引き上げたい。ポイントは車載基板事業を拡大しながら、それ以外の分野も同時に拡大させていくことだ。

―― 具体的な取り組みや目標数値は。
 石坂 3年前から営業本部内に「開発営業」を発足させ活動中だ。とにかくスピード感を持ってやることが大事だ。現場から上がってくる様々なニーズをいち早くキャッチして、既存の顧客以外の新規需要を開拓したい。車載以外の比率をできれば4~5割まで拡大したい。5年以内にはそうした姿に変わっていけたらと思っている。なお、新規事業の売り上げは今後、70億円程度まで引き上げる。高多層板やモジュール基板などに展開したい。

―― 研究開発も重要になります。
 石坂 研究開発拠点は新潟工場となる。開発要員も増員する必要がある。とにかく人材の強化は待ったなしだ。中途採用を含め積極的にエンジニア系の人材を確保していく。


(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2025年3月20日号5面 掲載

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