今、ホビー系のテナントが商業施設の集客装置として大きな役割を果たしているという声をよく聞く。大型ショッピングセンターのテナントとして出店するケースや、家電量販店の1カテゴリーとしてプラモデルを中心とした“モノづくり系”を大々的に集積する売り場など、ここ最近盛り上がりを見せているようだ。取材をさせていただくことも多いが、各社は自分たちをニッチな業界と謙遜する。だが、そこには大きな可能性を秘めている。
たしかに、各社が言うとおりホビー業界自体はそこまで大きな業界ではない。あくまで趣味嗜好の分野であるし、必ず生活に欠かせないというものでもないため、今後市場が爆発的に伸びるということはよっぽどのことがない限り少ないと思うが、それでも最近は様々な商業施設でホビー専門店を目にするし、実際にホビーショップへの出店オファーも増えているようだ。
ホビー業界はコロナ禍で伸びたという珍しい業界の一つでもある。かつて言われた「ステイホーム」によって時間ができた大人世代が昔熱中したプラモデルをもう一度やり始めたり、それを見た子ども世代が親と一緒に始めたりなど、幅広い世代に広がっているそうだ。また、作って終わりではなく、鉄道やミニ四駆なら実際に走らせるコースを併設したり、トレカ専門店ならカードゲームで遊べるコーナーを店内に設けたりなど、モノとコトの両方を提供する便利な業態でもある。
以前取材させてもらったマッチングワールド(株)は、「まちキャラ」というホビー専門店を展開しており、これまでは路面店だけだったが、2024年からはショッピングセンター(SC)内へのテナント出店を開始し、現在SC内のテナント店舗は「昭島モリタウン店」(東京都昭島市)と「コクーンシティ店」(さいたま市大宮区)の2店を有している。特に昭島店は開店前に約300人が行列を作ったというから驚きだ。今、ここまで人を集められるテナント・業種があるだろうか。
やはりホビー系テナントは目的性の高い客が多いことが特徴で、ふらっと来て買うというよりは、目当ての商品があってそれを目的に店舗へやって来るため、購買率も高い。また、どこにでも店舗があるわけではないのでリピーターにもなってくれるようだ。ネットでほとんどのものは揃うが、細かいものほど質感や微妙な色の違いにこだわりたい人も多いらしく、マッチングワールドとは別のある事業者は、「例えばあるエリアの主要都市にすれば、その隣県など広範囲から来てくれるので、ドミナント的に大量出店せず、ある程度エリアを絞った形での出店戦略が立てられる」と話す。
ニッチな業界でありながらも、少しずつ市場の広がりが見えるホビー業界。最近はインバウンド客も増えているようで、まだまだ成長の可能性はありそうだ。