商業施設新聞
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No.988

AI接客、お店に続々


安田遥香

2025/1/7

 最近AIがすごい。昔は何か質問をしても会話にならなかったり、頓珍漢な答えが返ってきたりしていたが、そういったことは以前に比べると減っている。小売店や飲食店は人手不足に悩まされており、この賢くなったAIを店頭での接客に活用する事例も増えてきた。実際、2024年は「AI×店舗」というテーマでの取材が多かった気がする。そこで今回は、これまでの取材の中で印象に残ったAIの店舗での活用事例を2つほど紹介したい。

 (株)日立製作所は、「AIアバター」「リモート接客」など4つのソリューションを組み合わせた「デジタルポップアップストアサービス」を運用している。AIアバターは、店頭に設置されているサイネージに表示されたアバターがおすすめの商品を紹介してくれる。生成AIを活用したことでアバターとの対話が可能となっているほか、サイネージと接続したAIカメラが性別や年代を判別し、各人に合った商品レコメンドも行える。一方、人による接客が必要であれば、スタッフが遠隔から接客を行ってくれる。

日立製作所の「デジタルポップアップストアサービス」。AIアバターが人の代わりに接客する
日立製作所の「デジタルポップアップストアサービス」。AIアバターが人の代わりに接客する
 あらゆるアプローチの接客を1つのソリューションにまとめたことで、省人化しての実店舗出店が可能になった。日立製作所とともにデジタルポップアップストアサービスの運用に携わる西日本鉄道(株)は、「ソラリアステージ」(福岡市中央区)4階の「雑貨館インキューブ天神店」でデジタルポップアップストアサービスを期間限定ながら活用した。すると、そこで販売した手帳の売り上げが前年比で20%伸びたという。1年間使い続ける手帳は自分に合った商品を店員に聞きながら選びたいというニーズが特に強い。これまでは店員が聞き役として対応していたが、それをAIアバターが代わりに行ってくれ、かつ売り上げも伸びたという好事例だ。

 一方、ビーモーション(株)が開発・運用支援を行う「接客オンデマンド」も、生成AIを活用した接客ツールだ。このサービスの大きな特徴は、アバターがこれまでのやり取りを記憶しており、会話のラリーを何往復も続けられること。「何かおすすめはありますか?」などの漠然とした質問に対しては、アバターがこちらに「質問返し」をし、詳細な会話へと広げていく。まさに、対人と同等の接客体験を実現していると言える。

 こちらは家電メーカーが家電量販店での接客スタッフを代替する目的での導入事例が多い。例えばハイセンスジャパン(株)は、接客オンデマンドを用いた「AI接客アドバイザー」を、昨年5月より全国の家電量販店で展開している。店頭設置のタブレットのほかスマホからの利用も可能とし、接客員の確保が難しくなっている中で彼らの代わりになって来店客の買い物をサポートしている。

 「AIは本当に信用できるの?」という疑念は過去のものになりつつある。労働人口が減少していく日本で、人手不足は小売・飲食店だけの問題ではない。今年も公私問わず色々なところでAIの話題を耳にするだろうか。
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