商業施設新聞
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No.958

越境ECの拡大に悩む韓国


嚴在漢

2024/6/4

国家戦略会議を主宰する尹大統領(24年5月17日)
国家戦略会議を主宰する尹大統領
(24年5月17日)
 韓国流通業界では最近、越境EC(中国オンラインショッピングプラットフォーム)が大きな話題になった。韓国政府は5月にKC認証(韓国統合安全認証)を得ていない子ども用品や電気製品、生活用品など80項目の越境ECを禁じると発表したが、直ちに撤回したのだ。消費者が激しく反発したためだ。

 近年の韓国人の消費パターンは、子ども向けの用品を購買する場合、デパートの品物はショールームのように利用するだけで、実際には比較安価の越境ECを活用することが主流となっている。韓国統計庁の資料によれば、越境EC市場の購買額は2018年の3兆6360億ウォンから23年には6兆7567億ウォン(約7678億円)と急増。韓国関税庁を通した国家別の通関件数は20年に中国(2748万件)、米国(2217万件)の順であったが、23年は中国が8881万件(全体の67.5%)、米国2536万件と中国の件数が大幅に増えたことが分かる。

 「消費に国境が消えてから久しい」との声もあり、政府の時代遅れの越境EC規制を強く批判する。韓国の消費者は同じ品物でも従来のシステムで輸入・販売すると、価格が2~3倍に跳ね上がる流通構造の見直しを求めている。いままでの韓国の流通過程ではマージンが重なり、実際の販売価格が上がってしまうのだ。小規模の輸入業者の場合は、中国から品物を輸入し、韓国国内でKS認証を取得することや流通チャンネルに手数料を支払うため、価格がさらに高くなると吐露する。

 加えて、韓国流通企業の障壁ともなっている規制を早急に改善すべきと訴えている。例えば、大型ディスカウントストアの義務休業日や夜明け前の配送禁止などを規定している「流通産業発展法の改正」が代表される。大型ディスカウントストアの市場競争力を後退させているとの批判を浴びており、ここ5年間のイーマートやホームプラス、ロッテマートなど韓国を代表する大型安売店3社の店舗数を見ると、それぞれ11店、10店、14店減少している。

 韓国大統領室は「今回、政府の越境ECの対策に大きく2つの不足点がある」とし、「KS認証を得なければ越境ECができないとの方針は、いくら国民の安全のためといっても消費者の選択権を過度に制限し、安価な製品の購買に努力する国民に不便さを招く」と陳謝した。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は今回の論争について「KS認証の導入計画を全面的に見直し、消費者の選択権と安全性をより重視する対策作り」を指示している。
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