電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第558回

イビデン(株) 代表取締役社長 青木武志氏


25年度飛躍へ「足腰鍛える時期に」
大野新工場 前倒しも念頭に

2024/1/12

イビデン(株) 代表取締役社長 青木武志氏
 半導体パッケージ基板業界を取り巻く環境が目まぐるしく変化している。チップレットの登場に伴う基板の大型化・高多層化という基本トレンドに変化はないものの、足元では大手顧客のフォーキャスト見直しなどに直面。同時に生成AIの台頭も進み、顧客ミックスの劇的な変化が進もうとしている。パッケージ基板大手のイビデン(株)(岐阜県大垣市)にも業界環境の変化に対する柔軟な対応が求められている。代表取締役社長を務める青木武志氏に現況、そして今後の見通しを伺った。

―― まずは、足元の市場環境から教えて下さい。
 青木 2023年10月下旬に23年度上期(4~9月)の決算発表を行ったが、その際に申し上げた市況動向よりも、足元は減速感が強まっている印象だ。汎用サーバー投資が依然として手控えられており、AIサーバーへの置き換えを進めたいクラウド事業者のあいだでは、それが顕著に出ている。投資意欲はあるものの、AIチップをはじめとする主要部品の入手が困難になっているのもその一因になっている。本格的な回復時期は24年下期に入ってからになりそうだ。パソコンも23年4~6月期で底は打っているものの、そこから力強く回復している状況には至っていない。

―― パッケージ基板で構成される電子事業の現況は。
 青木 もともと23~24年は落ち込むだろうと想定していた。ただ、上期の電子事業は市場が悪いなりには相応の仕上がりになったと思っており、具体的には、汎用サーバーのなかでも、既存製品の出荷が比較的好調だった。今のところ、電子部門の23年度通期見通しは、売上高2100億円(前年度比16%減)、営業利益335億円(同45%減)を見込む。

―― 大手顧客向けの新規品拡大における業績影響は。
 青木 もともと、そこの部分が大きく拡大すると見込んでいたが、汎用サーバー投資の停滞などを受け伸び悩んでいるのが実態だ。今期の業績低迷はそれに起因している部分が大きい。

―― 一方で、競合他社や生成AI関連の需要も台頭しています。
 青木 実際にそこで補えている部分もあるが、オフセットできていないのが正直なところだ。競合他社の汎用サーバー向けも足元で需要が低迷しているほか、生成AI向けも部品に起因した長納期化が間接的に、当社のパッケージ基板の需要を押し下げている。ただ、生成AI向け市場では独占的なシェアを獲得できており、部品律速が解消できれば自ずと回復してくる。

―― 今後は顧客戦略がより重要になってきそうです。
 青木 私が社長に就任して以降、顧客カバレッジの拡充に積極的に取り組んできた。高機能パッケージ基板を必要とする新規顧客の拡大を進めてきたことで、顧客ごとのカバレッジは以前に比べて均衡した状態になりつつある。顧客戦略という意味では、ある程度の成果は得られている。

―― 設備投資や生産戦略については。
 青木 すでに発表しているとおり、河間事業場の新棟は稼働延期を決めている。新棟建屋はほぼ完成しておりユーティリティー設備も整備済み、一部発注した生産設備も納入されてきているが稼働時期は26年に遅らせる。一方で、生成AI向けを中心とする大野新工場は、計画どおり建設を進めており、25年7~9月期の供給開始を予定している。前倒しも念頭に入っているが、今後の状況を見ながらの判断となりそうだ。

―― ガラスなど新材料を用いた開発も業界内では活発化してきています。
 青木 これまでにも、ガラスの採用に向けた業界内での動きは何度かあり、冷静に状況を見極めているところだ。技術的な課題もまだまだ残っており、穴あけやめっき処理に加えて、割れの問題もある。ただ、反り軽減という意味で有機材料にはない優位性があるのも事実で、社内でのR&Dは継続して行っている。

―― 来期の展望は。
 青木 24年度は現在の市況を考えても、23年度対比で微増にとどまると見ており、25年度の飛躍に向けて足腰を鍛える期間としたい。開発や生産など次世代人材の育成に加えて、国内外の生産拠点を同じ品質基準で作れるような「One Factory」と呼ぶ活動も社内で積極的に進めている。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2024年1月11日号1面 掲載

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