東京エレクトロン(株)(東京都港区)は、エッチングや成膜、コーター/デベロッパーなど幅広い領域で前工程プロセス装置を展開する一方、先端パッケージを中心とする後工程装置の事業にも力を入れている。そのなかでもウエハーボンダーは、これまでCMOSイメージセンサー分野を中心に着実に実績を積み重ねてきており、足元では生成AI向けで需要が拡大するHBM(High Bandwidth Memory)分野でさらなる受注の獲得が期待できる。ウエハー貼り合わせ工程を中心とした事業戦略について、ATSBUでBUGMを務める佐藤陽平氏に話を伺った。
―― ウエハーボンダーにおける、これまでの取り組みを教えて下さい。
佐藤 「Synapse」シリーズとして、CMOSイメージセンサーなどに用いられる永久接合タイプの「Si」と、TSV加工工程などで用いられるTB/DB(仮接合/剥離)タイプの「V」および「Z Plus」の大きく2種類がある。当社のウエハーボンダー事業は現在のところ、CMOSイメージセンサー向けを中心に「Si」が主力機種になっている。これまで長年培ってきたウエハー搬送技術や薬液塗布技術、プラズマ処理技術、そしてクラスターシステムによる高い量産性を武器に市場シェアを拡大してきた。
―― 足元の引き合い・受注状況は。
佐藤 HBM向けに「Synapse V」および「Synapse Z Plus」の受注が大きく拡大している。HBMはDRAMダイを積層する際にTSV接続が必要となるが、この加工ではTB/DB工程が必要となり、当社の装置が広く採用されている。多くの引き合いがあり、生産拠点である東京エレクトロン九州(株)では、顧客の求める納期を達成できるように、様々な工夫・努力をして、これに対応している。
―― 貼り合わせ工程における事業の方向性は。
佐藤 メモリー分野での需要を中心に獲得していきたい。先ほど申し上げたとおり、足元ではHBM向けにTB/DBの需要が急拡大しているが、将来的にはそれ以上にメモリー向けに永久接合のニーズが高まるとみている。例えば、3D-NANDではCUA(CMOS Under Array)のようなモノリシックタイプから、メモリーセルとロジック回路を貼り合わせた新構造に移行しつつある。これによりロジック回路性能の向上だけでなく、さらなる多層化へ向けて高温プロセスを回避できる、TATを短縮できるなどのメリットがある。
また、3D-DRAMに関しても貼り合わせ工程が出てくるとみているほか、最先端ロジックで今後採用予定のBSPDN(Back Side Power Delivery Network=裏面電源供給)構造でも、貼り合わせ工程がキーテクノロジーとなり、メモリー、ロジック双方で潜在的な需要は非常に大きいと期待している。
―― レーザートリミング装置も新たに発表しました。
佐藤 ボンディング後にウエハーを薄化するが、チッピングが課題となっており、エッジ加工用途としてレーザートリミング装置「Ulucus L」を新たに開発し、現在顧客側で評価が進んでいる。従来、エッジ加工はブレードで行っていたが、デバイスへのダメージも懸念されるため、レーザーによる高品質かつ高精度加工、かつ純水使用量、粉塵排出量、排水量の削減にも寄与するトリミングに対するニーズが大きくなっている。
(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2023年11月23日号1面 掲載