電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第548回

(株)KOKUSAI ELECTRIC 代表取締役 社長執行役員 金井史幸氏


「ALD化の流れで商機掴む」
日韓で開発・生産強化

2023/10/27

(株)KOKUSAI ELECTRIC 代表取締役<br /> 社長執行役員 金井史幸氏
 (株)KOKUSAI ELECTRIC(東京都千代田区)が、ついに10月25日に東証プライム市場への上場を果たした。もともと、日立国際電気の半導体製造装置部門として事業を展開していたが、2018年に独立。KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)の支援のもと、アプライド マテリアルズ(AMAT)との事業統合を模索したが、関係国の競争法当局の承認が下りず、21年3月にこれを断念。その後は単独での新規上場に向けて準備を進め、今回の上場にこぎつけた。代表取締役 社長執行役員を務める金井史幸氏にこれまでの歩み、そして今後の事業戦略を伺った。

―― 上場おめでとうございます。まずはここまでを振り返って。
 金井 「長かった」というのが率直なところだ。日立国際電気から独立して以降、ここまで時間がかかるとは思っていなかった。ただ、結果的にKKRと二人三脚でここまで来れたことは本当に良かったと思っている。当初はファンドの傘下に入ることに抵抗を感じる社員もいたと思うが、この数年間で本当に信頼できるパートナーとして強固な関係を築くことができた。

―― AMATとの経営統合は破談になりましたが、以降の関係は。
 金井 当社株式の15%を所有するステークホルダーとしての立場に加えて、開発面では競合するトリートメント分野を除いて、フリーに議論できる環境が出来上がっている。周知のとおり、これからの半導体製造装置業界はプロセスインテグレーションが非常に重要になる。当社は成膜装置専業であるため、幅広い製品ポートフォリオを持つ彼らとの接点は今後も大事にしていきたい。

―― 足元の事業環境を教えて下さい。
 金井 我々の業績を左右するメモリー投資は24年度後半から回復し始め、本格的な業績回復は25年度になると見ている。中長期的には、IoTやビッグデータ、AIなどの技術革新は続き、需要は回復すると予測されており、この次の成長期をしっかりと捉えていきたい。

―― 中長期の売上目標は。
 金井 中長期ではWFE(Wafer Fab Equipment)市場1100億~1200億ドルを前提に、売上高3000億~3300億円、粗利益率43%以上、調整後営業利益率28~30%の達成を目標に掲げている。具体的には3~5年後を想定したものだが、市場全体の成長に加え、シェア拡大などプラスアルファで、これを実現していく。

―― プラスアルファの部分はどう実現しますか。
 金井 当社グループでは、複数のガスをサイクリックに供給する工程を伴い、原子層レベルで成膜する手法を「ALD」と呼んでいるが、我々が得意とする成膜工程はALD化の流れが強まっており、ここで商機を掴んでいきたい。先端デバイスで追加されるALDを用いた新工程のPOR(Process of Record=顧客側ラインの承認)を着実に獲得していきたい。例えば、メモリー分野ではバッチALDは絶縁膜工程で主に用いられてきたが、今後はDRAM分野を中心にメタル工程でバッチALDの採用が増えると見ている。もう1つはロジック分野の強化だ。メモリー比率の高い事業構成からロジック向けの構成比も増やして、将来的にはバランスの取れた事業ポートフォリオを確立していきたい。

―― 最後に生産・開発体制の強化について。
 金井 富山県砺波市の新工場建設は順調に進んでおり、24年秋の竣工を予定している。砺波新工場の稼働により、30年までの需要増に対応できる体制が整えられる。また、富山事業所では生産機能の一部を砺波新工場に移管することで、開発フロアの拡張を図る。韓国拠点(Kokusai Electric Korea)では、新棟を建設して大手顧客向けに評価機を設置して現地対応力の強化を図っていく計画だ。

(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2023年10月26日号1面 掲載

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