日本ケミコン(株)(東京都品川区大崎5-6-4、Tel.03-5436-7711)は、1931(昭和6)年の創業以来、アルミ電解コンデンサーを事業の柱に据え、様々な電子部品の開発に取り組み、量産を拡大してきた。アルミ電解コンデンサーでは世界シェア約30%を握っており、トップを疾走している。最近では環境/新エネルギーをキーワードにした大容量タイプの電気二重層キャパシタを業界に先駆けて量産化、強化している。
インバーター向けの大型コンデンサー、新材料による蓄電デバイス、さらには車載向けデバイスなどにも新規展開を図っている。「環境と人に優しい技術への貢献」を企業理念に掲げる同社は、中長期計画で2000億円の売り上げを目標にしており、R&Dに磨きをかけているのだ。同社を率いる内山郁夫氏に今後の方向性について伺った。
―― 新潟県上越市のご出身ですね。
内山 新潟県立高田高校を出て宇都宮大学で大学院に進み、電気化学を学んだ。77年に日本ケミコンに入社し、13年間は材料開発に従事した。その後、コンデンサー材料のアルミニウム電極箔を製造する新潟工場の工場長を務めたが、アルミニウム電極箔の技術は当社の最も重要なコア技術の1つだと認識している。私自身のテーマは常に「材料」にある。材料の作り込みからデバイス、モジュールへというプロセスでいつも考えてきた。
―― アルミ電解コンデンサーの世界チャンピオンですね。
内山 当社はこの分野で常に世界の先頭を走り続けてきた、という自負を持っている。例えば、パソコンやデジタル家電の高機能化には、アルミ電解コンデンサーの技術を応用した導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーをいち早く開発し、市場に投入した。さらに現在、この技術はハイブリッドコンデンサーの開発に結びつき、より高信頼性が求められる電源機器やカーエレクトロニクス機器にまで、導電性製品の用途は広がりを見せている。このように、イノベーションを繰り返すことで発展してきたのが当社の歴史だと考えている。
足元では、アルミ電解コンデンサーに対して、高耐圧の製品が市場から求められている。太陽光、風力などの新エネルギーや産業機器などのインバーター電源、パワーエレクトロニクス機器などにアプリが急速に拡大している。さらに医療用途にも需要が膨らんでおり、今後の市場拡大に期待しているところだ。こうした分野に向けた新製品を開発するためには、アルミニウム電極箔の技術革新が重要であると考えている。
―― 素材開発、装置内製にこだわっていますね。
内山 そのとおりだ。日本ケミコンはアルミニウム電極箔で世界最大の生産量を誇っている。また、コンデンサーに使用するアルミケースや封口ゴムなどの開発と製造も社内でやっている。最近では次世代電池やキャパシタ材料として有望なナノ材料開発にも取り組んでいる。
一方、自社内製機械も重視している。知財権を守るためには素材から作り込み、装置を内作することが一番重要だ。海外にも進出しているが、コアとなる電極箔のエッチング工程は高萩工場と新潟工場での国内生産に集中している。
―― 省エネや蓄エネにもこだわりを見せています。
内山 当社の電気二重層キャパシタは、エネルギーの有効利用や省エネルギー化に貢献する蓄電デバイスとして、様々な分野から注目いただいている。今後エネルギーのスマート化が進むなかで、蓄電デバイスの存在はますます大きくなるだろう。
自動車においても、ブレーキを踏んだときにエネルギーロスが多く生まれるが、これを蓄電して再利用するエネルギー回生用途に電気二重層キャパシタを提案している。すでに国内の自動車メーカーに採用されており、燃費が改善するということで大いに関心を集めている。
また当社は、アルミ電解や電気二重層キャパシタのほか、MLCCやバリスタ、コイルなども生産している。LCモジュールなどのモジュール化技術を強化し、その強みを活かしたい。一方、CMOSセンサーを使ったカメラモジュールも車載向けに好調だ。
―― 今後の売り上げ目標については。
内山 2014年3月期売り上げ実績は1139億円であった。15年3月期は1180億円を計画している。現在は新規技術の仕込み時期であると考えており、R&Dには注力しているが、大型の設備投資は控えている。現状で売り上げの80%は海外、生産の65%も海外となっている。海外生産比率は今後75%まで拡大すると見ている。10年後の姿として売り上げ2000億円を設定しており、エネルギー関連で、そしてキャパシタ関連でナンバーOneという意味のE・C・O・ソリューションを今後のテーマとして掲げている。
(聞き手・特別編集委員 泉谷渉)
(本紙2014年9月3日号3面 掲載)