―― 中期経営計画「REGROW」の初年度です。
野上 最終年度の2016年12月期に過去最高水準の営業利益25億円達成を目指す。簡単に達成できないレベルを目標に掲げたが、産機(事務機器やアミューズなど)、民生、モバイル、車載を戦略4市場に定め、高速インターフェースや画像処理、電源&ドライバーといった特定分野で世界No.1のソリューションプロバイダーになるつもりだ。
―― 事業ポートフォリオが依然と大きく変わった。
野上 かつてはパネルコントローラーを顧客の特定モデルに提供するかたちがメーンだったが、現在はASSPを戦略市場のあらゆる用途に提供するマルチアプリケーション方式に変えた。リファレンスデザインへの採用率を高めるため、チップセット化を進める製品戦略を敷いており、直近ではドライバーの開発に力を入れている。
例えば、ドライブレコーダー用には、当社のISPとオリジナル高速インターフェースのV-by-One HSを提供してイメージセンサーをサポートしつつ、車載用液晶ドライバーの新インターフェースとしてeDriConを開発した。
自社で対応できないところはパートナーとの提携をさらに進める。米クアルコムへのV-by-One HS、パナソニックへのeDriConのライセンス供与はそうした流れの一環だ。
―― 車載市場への取り組みを強化している。
野上 顧客によっては当社のLSIをカーナビなどのディスプレー周辺にご利用いただいていたが、ISOの9001や14001の認証を取得し、TS16949に準拠したお客様のご要求にお応えできるよう改めて社内体制をきちんと整備した。
ファブレスとはいえ、製造工程の理解が深い当社は、以前からチップの市場不良率がシングルppmという高い水準を実現しており、ものづくりでは車載に要求される品質を達成してきた。独自の製造工程監視システム「QuEST」を磨いてきた成果だ。こうした努力が粗利益率の向上にもつながっている。
ちなみに、ファンドリー委託先はベストプラクティスの半導体工場を柔軟に使い分けているが、あと数円、円安になれば、国内工場に委託しても十分に採算があうレベルに来た。
―― 14年1~3月期には粗利益率が63.9%にまで達した。
野上 業界内でこの水準を達成できている競合はそういない。これを戦略4市場で分けると、粗利の48%を産機、36%を民生が占めた。国内ユーザーが想定以上に堅調だったため、1~3月期の業績は当初見通しを若干上回った。海外では4K関連の需要が思った以上に伸びており、V-by-One HS新製品への引き合いが旺盛だ。
―― 海外ビジネスの拡大にも注力している。
野上 1~3月期の海外売上高は前年同期比で29%の増収だった。通年でも前年比25%以上の増収を目指していく。すでに拠点がある中国、韓国、台湾では1月から現地の方にトップを任せて、地域間で競争意識を高めてもらうかたちに変えた。次のターゲットとして欧米市場の開拓に注力しており、リファレンスデザインへの採用拡大に向けて、現地に拠点を置くべきか検討しているところだ。
―― 新製品I/Ospreaderは魅力的なデバイスです。
野上 16本のパラレル信号を1本のシリアル信号のみで伝送することが可能になるため、機器内部のケーブル数を16分の1に削減できる新インターフェース技術だ。券売機などボタンが多い機器に適しており、現在ユーザー評価中だ。
(聞き手・本紙編集部)
(本紙2014年5月28日号1面 掲載)