商業施設新聞
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No.442

韓国、平昌冬季五輪後の懸念


嚴在漢

2014/1/28

平昌冬季五輪競技場の全体鳥瞰図
平昌冬季五輪競技場の全体鳥瞰図
2020年に東京オリンピックの開催が決まり、盛り上がりを見せている。実は、東京オリンピック開催の前々年である18年に韓国東南部の江原道平昌(ピョンチャン)で冬季五輪が開催される。

 このビッグイベントを通じて江原道側は、経済効果20兆4973億ウォン(約2兆500億円)をはじめ、23万人の雇用創出、さらに大会期間中に20万人の外国人観光客を見込んでいる。

 しかし、この楽観的な見通しにはオリンピック終了後の施設活用、観光地化するための予算が盛り込まれていないことを懸念する声が高まっている。

 14年早々、韓国国会で通過した「2014年韓国政府予算」によれば、18年までに投資される平昌冬季五輪の予算は、総額12兆8485億ウォン(約1兆2850億円)としている。実はこの予算はオリンピックを誘致した際の想定予算である8兆8098億ウォンから50%も増えた計算になる。

 しかしこの2014年韓国政府予算には、オリンピック終了後に平昌と江原道エリアを国際的な観光地とするための、また商業施設として活用するための総合プランは含まれていない。さらに今後、観光地に向けた育成計画を策定し、それを統括する組織がないことも課題として指摘されている。オリンピックを一過性のイベントではなく、観光産業と創造経済につなげて、地域と国家経済に貢献するためには、政府と五輪組織委員会を網羅する組織の創設が求められている。

 振り返ると、これまでオリンピック終了後の施設運営で失敗した都市はいくつもある。06年に開かれたトリノ(イタリア) オリンピックの場合、運営費の問題で12年に競技場トラックを閉鎖した。36億米ドルを費やした施設を生かしきれなかった。また、10年に開催したバンクーバー(カナダ)五輪も、選手村の未分譲物件の安売り販売で地元住民らが訴訟を起こし、58億米ドル強の大会費用を無駄使いしたと非難されている。

平昌にはすでに雪冬の施設が運営されている
平昌にはすでに雪冬の施設が運営されている
 平昌冬季オリンピックがそれらの二の舞にならないためには、地域住民が参画するロードマップ作りが不可欠だといわれている。オリンピック終了後の商業施設や観光地化を見据えた戦略として、政府と地方自治体が力を合わせて、「ポスト平昌」に向けた協議体の設立が急務だ。誰も責任を負わない現状のシステムでは、平昌と江原道、さらには国家財政にも大きな負担になりかねない。

 韓国は、かつて「1988年ソウルオリンピック」を成功させた経験がある。当時は、韓国経済の高成長と相まって五輪特需を謳歌した。
 
だが、いまや厳しい低成長時代の到来が予想されることから、平昌冬季オリンピックの準備と事後の活性化のために、真剣に取り組むべき時であろう。
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