商業施設新聞
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No.1000

再開発に影を落とす建築費高騰


山田高裕

2025/4/1

白紙となった中野サンプラザ再開発計画のイメージ
白紙となった中野サンプラザ再開発計画のイメージ
 先日、中野サンプラザとその周辺を再開発する「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業」について、現行の計画を事実上白紙化する方針が中野区から示された。当初計画では野村不動産などが事業者となり、総延べ面積約29万8000m²、最大7000人規模のホールや、ホテル、オフィス・レジデンス・商業などを導入する施設を整備するものだったが、建設費が当初想定の2倍程度まで膨らみ、いったん規模や計画などの見直しが図られるも、最終的には計画が事実上白紙となったものだ。

 公共施設について、こうした建設費高騰による建設計画の中止や入札の不調というものは、以前からしばしば起きていた。直近の3月でも青森県むつ市のむつ総合病院の新病棟建て替え計画について、建設費高騰のため財源にめどが立たなくなったとし、施工者選定のための公告を中止したという出来事があった。また、広島駅北口で計画中の新病院についても、建築費の高騰が問題となっている。

 建設費高騰による再開発や建設計画の中止・凍結や遅延などは、地方にとどまるところではない。東京都目黒区では2月、老朽化した区民センターなどの再整備計画について、当初の想定より100億円近く費用がかさむ見通しとなったことから、計画を2年程度遅らせる方針を示した。東京都北区でも、コミュニティ施設「北とぴあ」の改修計画について、建築費が高騰し当初の2倍程度となったことから、計画の見直しを行っている。品川区五反田のTOCビル建て替え計画についても、建築費の高騰から建て替えを延期、現施設をしばらく使用し続けるとしており、着工は9年近く延期され2033年ごろになる見通しが示されている。

 大規模イベントにもその影響が表れている。4月13日から開催される大阪万博にて、建設の遅延や建築費の高騰が問題として噴出していたのが代表的な事例だが、27年に横浜市で開催を予定している国際園芸博覧会についても、会場建設費が22年の試算から100億円近く膨らんだ417億円に上る見通しが示され、問題となっている。また施工する建設業者についても、資材の高騰が足かせとなり、帝国データバンクによる調査では2024年の建設業における倒産件数は1890件を記録し、過去10年で最多となっているようだ。

 こうした建設費用の高騰は、現在の日本における大きな問題となっている。人手不足や工事費用の高騰が続けば既存のインフラの維持すらおぼつかない状況になってしまう。社会の活力維持のためにも、行政などによる何らかの施策も求められるだろう。
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