商業施設新聞
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No.441

へっぴりへっぴり!


高橋 直也

2014/1/14

 時は昨年12月下旬、場所は秋葉原の焼肉屋。筆者は理想と現実の違いに肩を落としていた。

 同僚3人でバッティングセンターに行ってきたのである。たまにはスマホのスマートさを駆使しようと、打席の様子を動画で撮影してもらった。2打席、計40球ほどを打ち、長打的な打球はなかったが、そこそこミートしたという感触。同僚2人も2打席、約40球を打ち、屋外のバッティングセンターだったが、いい汗をかいた。せっかくなので反省会と称して3人で焼肉へGO。

「ここまではそこまで酷くない」
「ここまではそこまで酷くない」
 乾杯して、肉をそこそこに焼きつつ動画をさっそく確認。考えてみれば、自分のスイングを動画で見るのは初めてだ。筆者は小学校から野球をはじめ、いまでも月1回ほどバッティングセンターに通う。野球理論についての本も読んだ。視力は衰えたがスイングはきれいに違いない、と思いきや……画面に現れた男のスイングは、なんと無様なことか。

「すでにへっぴり腰」
「すでにへっぴり腰」
 バックスイングが無駄に大きい上に、脇が開いている。余計な動作をしないでまっすぐボールめがけて振ればいいのに。その上、怖がって足を踏み込めていないので、へっぴり腰になっている。全スイングを見たが、とにかく共通して腰が引けている。タダでさえ外角は苦手なのに、これでは外に踏み込んで打てるわけがない。

「ダメだこりゃ」
「ダメだこりゃ」
 バッティングセンターに行くたびに周りの人のスイングを見て「ヘイヘイ、そんな振りじゃ前に飛ばないゼ」とニヤニヤしながら眺めていた。しかし実は自分こそ「おい、見ろよ。なんだあのへっぴり腰スイング」と馬鹿にされていたのだろう。嫌なことに気付いてしまった。誰だ、携帯電話に動画機能をつけるなんて言い出したのは。

 あの日以来、ラップの筒をバット代わりに洗面所の鏡の前でスイングするのが日課となった。よく見ると確かに素振りでも腰が引けている。こんなに酷いのか……。

 そういえば以前、セレクトショップを取材したときに「自分らが気に入って、店に置きたい商品はいっぱいある。しかしそれがお客さんがほしいものとは限らない。主観でなく、客観的に見て売れる店かを判断しなければならない」ということを聞いた。

 思えば最近、良い記事か、良い企画かはあまり考えずに、やりたいことばかりしている(この原稿含む)。決めた。今年のテーマは客観的な視点だ。楽しくても役に立てなければ、評価されなければ、お金にならなければ仕事として意味はない。もうちょっと引いた目で仕事をしてみるとしよう。
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