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厚生労働省医政局研究開発振興課 再生医療研究推進室 ヒト幹細胞臨床研究対策専門官 原 章規氏(中)


再生医療の実用化推進へ法的整備

2013/10/29

セミナー会場風景
セミナー会場風景
 (株)JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナーで、厚生労働省医政局研究開発振興課・再生医療研究推進室・ヒト幹細胞臨床研究対策専門官の原章規氏の「オールジャパン体制のもと戦略的に推進する『再生医療の実用化に向けた制度面・予算面からの取組みと実施体制』~『再生医療の実現化ハイウェイ構想』をふまえて~」と題する講演が行われた。原氏の講演の内容を伝える連載の2回目となる今回は、「再生医療の法整備」について。

◇   ◇   ◇

 原氏は、今後の再生医療の実用化を促進する制度的枠組みのイメージとして、5月10日に公布された「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けるための総合的な施策の推進に関する法律」における「自由診療および臨床研究」の領域に適用される再生医療等安全性確保法案(再生医療新法案)と、「製造販売」の領域に適用される薬事法等改正法案について解説した。いずれも、5月24日に国会に提出された。
 再生医療等安全性確保法案では、迅速性を確保するため、細胞培養加工について、医療機関から企業への外部委託を可能とすることが定められ、安全性確保のために、再生医療等のリスクに応じた三段階の提供基準と計画の届出等の手続き、細胞培養加工施設の基準と許可等の手続きが定められた。薬事法等改正法案においては、再生医療等製品の特性に応じた条件・期限付きの早期承認制度の導入による迅速性の確保、患者への説明と同意、使用の対象者に関する事項の記録・保存など市販後の安全対策が定められており、臨時国会で審議される見通しとなっている。
 再生医療等安全確保法案では、再生医療等を第一種再生医療等(高リスクなもの)、第二種再生医療等(中リスク)、第三種再生医療等(低リスク)に分類し、それぞれに応じた手続きが設定される。
 第一種から第三種までのどのレベルに該当するかの指定に関しては、(1)投与細胞のリスク要因(原材料・調製過程・最終細胞調製品における新規性、純度、均質性、恒常性、安定性など)、(2)治療法の新規性および投与部位や投与方法などによるリスク要因(新規性、投与部位、投与経路、投与量、自家か他家か、homologousか否かなど)を総合的に考慮し、再生医療等技術の安全性確保対策の必要度を高(第一種)・中(第二種)・低(第三種)に分類する。
 なお、個別の医療の具体的なリスクの分類は、厚生科学審議会により審議し、あらかじめ定めるとしている。また、リスクは科学技術の進歩により変わり得るため、厚生科学審議会の意見を踏まえ不断の見直しを行うとしている。
 細胞培養加工の外部委託のイメージは、臨床研究・自由診療(再生医療等安全性確保法案)においては、採取などの実施手続き、再生医療等を提供する医療機関の基準、細胞を培養・加工する施設(企業の工場など許可を得た施設)の基準等を規定し、安全性を確保するとともに、再生医療等製品(薬事法等改正法案)では、再生医療等製品の製造所(企業の工場など)の基準等を規定し、再生医療等製品の品質、有効性、安全性を確保する。再生医療等安全性確保法案に基づいて、医師の責任の下で実施される細胞の培養・加工の委託については、薬事法等改正法案の適用外となる。
 再生医療等安全性確保法案が成立すれば、順次、再生医療等の提供、認定再生医療等委員会、特定細胞加工物の製造に係る規定等を政省令として公布施行していく必要があり、再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会において政省令で定めるべき事項に関して審議を仰ぐ予定としているが、それに先立ち研究班(「再生医療等提供基準ワーキンググループ」、「認定再生医療等委員会ワーキンググループ」、「特定細胞加工物製造ワーキンググループ」)を組織し、政省令で定めるべき事項の案を作成する。
 原氏は、続いて、再生医療品等製品に関する項目を含む、薬事法等の一部を改正する法律案の概要について解説した。
 薬事法等改正法案の概要のうち、再生医療に該当する部分については、3.再生医療等製品の特性を踏まえた規制の構築((1)「再生医療等製品」を新たに定義するとともに、その特性を踏まえた安全対策等の規制を設ける。(2)均質でない再生医療等製品について、有効性が推定され、安全性が認められれば、特別に早期に、条件及び期限を付して製造販売承認を与えることを可能とする。)を挙げた。
 3.(2)に関しては、従来の承認までの道筋では、ヒトの細胞を用いることから、個人差を反映して品質が不均一となるため、有効性を確認するためのデータの収集・評価に長時間を要すが、薬事法等改正法案では、患者へのアクセスをより早くできる承認制度が設けられている。
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