(医)徳洲会(大阪市北区梅田1-3-1200)の東京西徳洲会病院(東京都昭島市松原町3-1-1、Tel.042-500-4433)では、2021年4月に82床の病床配分を受けた。そこで、(医)徳洲会常務理事で東京西徳洲会病院院長の渡部和巨氏に抱負や徳洲会グループについて伺った。
―― ご略歴から。
渡部 1985年の旭川医科大学卒業とともに茅ヶ崎徳洲会病院(現、湘南藤沢徳洲会病院)に入職した。茅ヶ崎徳洲会病院では、大学5回生の夏に3週間、冬2週間、6回生で1週間の実習を受けたが、そのハイカラな雰囲気に魅了された。アメリカで医師免許を取得した医師も多く、コーヒーを飲みながらの時間どおり終了するカンファレンスなど、当時の日本の病院には少ない洗練されたスタイルを採っていた。また、リトルブラウン出版の多くのマニュアルを購入し、自分が見つけた症例の患者様は、自ら手術ができるといったやり方も魅力的であった。学生時代から前向き、自主的にオペ技術も縫合技術も磨き、第一助手のすぐ代わりになれるように、常に準備を怠らないようにしていた。
91年に湘南鎌倉病院(現、湘南鎌倉総合病院)入職、92年国立がんセンター(現、国立がん研究センター中央病院)研修、94年米国研修、2006年湘南鎌倉総合病院副院長、08年茅ヶ崎徳洲会総合病院(現、湘南藤沢徳洲会病院)院長代行兼務(13年まで)となり、この時期は、茅ヶ崎、藤沢、東京西の3病院で年間計1000件以上の手術を3年間にわたり行った。14年に東京西徳洲会病院院長、16年に徳洲会常務理事に就任した。
対外的には、1996年第55回日本気胸研究会(現、日本気胸・嚢胞性肺疾患学会)会長、2009年第五回日本短期滞在外科手術研究会副会長、AARCの国際功労賞受賞、19年には日本人として2人目のFAARC(Fellow of the American Association of Respiratory Care)に選出された。
―― 東京西徳洲会病院に病床配分がありました。
渡部 82床の配分を受け、うち40床が感染症病床、残り42床が災害病床となる。北多摩西部医療圏では218床の不足病床があり、医師会、都、市などの支援もあり増床が認められた。3月31日までに審査のため東京都に病床配置の設計図書を提出する。順調にいけば、年内に着工し、23年度中に改修完了と病床を稼働させ、24年4月1日スタートの医師の働き方改革に間に合わせる。増床の病室は、別フロアに機能を移設した跡の本館8階、外来使用中の本館3階の南病棟、外部へ機能を移設した跡の別館2階に配置する。
当院は、05年9月に280床で開院、16年6月から許可病床486床がフル稼働し、今回の増床で568床となる。グループでは、湘南鎌倉総合病院が658床(稼働病床629床)、千葉西総合病院が許可病床608床、福岡徳洲会病院602床に次ぐ病床数で、その次が473床の宇治徳洲会病院。
―― 増床とともに強化する医療分野について教えて下さい。
渡部 新たな診療科目を増やし、今ある診療科の医師を増員したい。「院長の仕事はひとを集めること」であり、そのため、機会を見つけて説明会を開催し、協力を求めて医学系大学を訪問している。マグネットホスピタルには、もちろん、21年4月に稼働した高精度放射線治療装置トモセラピーのような最新の医療機器の導入も重要な要素であるが、院長や部門責任者の人格、リーダーシップが重要であると常々考えている。
―― 徳洲会グループについて。
渡部 1973年1月、徳田虎雄・現名誉理事長が最初の病院となる徳田病院(60床、現、松原徳洲会病院)を開設し、1975年に(医)徳洲会を設立した。理念『生命だけは平等だ』の下、徳田氏のリーダーシップ、高度経済成長と医療ニーズの増大、現場職員の意欲のおかげで、現在、グループは71病院を擁するまでになった。M&Aないし指定管理者病院によるものが、病院数のうちの24%、全病床1万7909床のうちの18%を占める。71病院のほか、クリニック・診療所30施設、介護老人保健施設38施設、訪問看護ステーション49施設、特養ホームその他福祉施設161施設で計349施設、グループの年間収益は5000億円を、全グループ職員数は3万5000人を超えている。
また、米国で1994年に設立された国際非営利団体JCIの認証を受けている病院・施設は11件にのぼり、このうちの5病院が21年11月から更新審査を受けている。徳洲会グループの認証取得施設は、湘南鎌倉、葉山ハートセンター、札幌東、南部、湘南藤沢、中部、岸和田、福岡、千葉西、東京西、八尾の11病院。JCI認証は、「医療の質と患者安全の継続的な改善」を目的として、世界90カ国以上における医療機関および政府機構を支援し現在では「世界70カ国800」の医療施設が取得している。世界の中で最も厳しい基準を持つ第三者評価といわれており、21年7月現在、国内の病院プログラムの認証取得が29病院であり、このうち、徳洲会グループは11病院、3分の1以上を占める。
―― 今後の展望を。
渡部 新型コロナウイルスなど未知なる感染症、近い将来、必ず起こるとされる大地震、少子高齢化、医療・介護保険財政などの課題があり、将来展望を安易に掲げるわけにはいかないが、疾病構造や社会情勢を把握し、常に半歩先を進んだ医療を提供する考えである。徳洲会グループは、『生命だけは平等だ』の理念であれば、365日24時間断らないことが必然のこととして病院運営を続けてきた。法人設立以降、初期には、各地で医師会との軋轢が生じたこともあったが、新型コロナウイルスに関しては、例えば、国内総病床数160万床、徳洲会グループ約1万8000床でシェアは1.1%であるが、これまで、全国の感染患者の5%を受け入れてきた。コロナ禍での対応は、各地で存在感が再認識され、当院の病床配分への後押し、厚遇にもつながったと考えている。
当院の半径10km圏内では、160万人の人口があり、立地する昭島市においては、高齢化の進展に加え、昭和飛行機工業を、世界的な投資会社傘下のBCPEが買収し、人口1万人増加のプロジェクトがスタートしており、今後は医療ニーズが増すことが予想される。こうした人々にいつでもすべての加療ができる病院にしていきたい。
また、グループが大規模になった今、積極的なJCI認証取得と同様、率先躬行あるのみである。
(聞き手・編集長 倉知良次)