医療産業情報
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内

(医)徳洲会副理事長 湘南鎌倉総合病院院長 篠崎伸明氏


救命救急センター・外傷センターを開設、救急車2.5万件受け入れへ(1)
週7日全日の医療体制整備、1月から陽子線治療を開始、23年にBNCT稼働

2022/7/5

篠崎伸明院長
篠崎伸明院長
 (医)徳洲会 湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市岡本1370-1、Tel.0467-46-1717)は、4月に救命救急センター・外傷センターを開設した。また2021年4月には先端医療センターを設置しており、22年1月から陽子線治療を開始している。同病院院長の篠崎伸明氏に医療の現状と展望を聞いた。

―― 4月に救命救急外傷センターを開設した。
 篠崎 救命救急センター・外傷センターは、地下1階地上6階建て延べ1万3725m²の施設である。1階はER(救急処置室)/ERエリア/検査室、2階はICU、ECU(救命救急治療室)、スタッフステーション、3階は病棟(外傷)、スタッフステーション、4階は病棟(循環器・心臓血管外科)、スタッフステーション、5階は手術室、6階は外傷専用のリハビリテーション室となっている。従来の救命救急センターが年間約1万8000件(21年度)の救急車を受け入れてきたが、これ以上の救急受け入れが困難で手狭になったため、新たな施設を開設した。これにより救急車を年間2万5000件まで受け入れ可能な体制に拡充している。これにより、救急機能のこれまでの満杯状態は解消できると期待している。新たな施設ではCT、MRIを施設内で専用の機器として設置した。このためセンター内で初期治療を行え、患者の移動が少なくて済む。2階には救命救急病床20床と、ERから搬送される重症患者病床10床を設置している。この病床をうまく運用しながら、下階で救急患者が入院待ちをすることがなく、救命救急機能を果たすことができる。医師の救急勤務の従事者はどんどん集まってきてくれているので、3交代勤務体制を敷き、24時間体制で医療従事者が救急患者の搬送を受け入れられる。

―― 21年4月には先端医療センターを開設している。
救命救急センター・外傷センター
救命救急センター・外傷センター
 篠崎 先端医療センターは地下1階地上4階建ての施設。地下1階にはPET検査の診断薬を作製する設備を導入、地上1階には陽子線治療室、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)室、PET-CT・SPECT(シングルフォトン断層撮影)-CT検査室に加え、乳腺外科外来・婦人科外来も設置している。陽子線治療装置は22年1月から稼働している。BNCTは薬事申請を今後行い、稼働は23年になる予定。コロナ禍で、米国から技術者が移動できなくなってしまい、稼働が遅れている。BNCTは、日本ではあまり施設例がなく、今後は東南アジアや中国でのニーズも探りたい。先端医療センターと、救命救急センター・外傷センターの2施設の開設で、ハードウエアの整備は計画どおりに進んだ。

―― ―4階には、再生医療センターを導入した。
 篠崎 4階は再生医療センター、細胞培養・ゲノム細胞分析センター、トレーニングセンター(大会議室)を設置した。再生医療センターでは再生医療等安全性確保法を順守した先端的な再生医療を、ひとりでも多くの患者に「当たり前の医療」として提供することを目指し、これまで有効な治療法が確立していない疾患である透析患者重症下肢虚血(先進医療B)、急性腎不全(臨床研究)、脊髄損傷(同)、肝硬変(同)に対し、自己末梢血由来CD34陽性幹細胞による再生医療を行う。3階にあるオンコロジーセンターでは外来化学療法などを実施するほか、血液内科外来も設置した。2階の予防医学センターでは、CTやMRI、内視鏡室などを備え、人間ドックや特定健診を行う。従来の約3倍の広さになった。男性と女性で入り口が分かれ、受診の際に動線が交わらないように工夫されている。1階の乳腺外科外来につながる女性専用エレベーターもあり、マンモグラフィー(乳房X線)検査を受ける際にも利便性が良い。

―― 今後の機能整備の方向性について。
 篠崎 21年に開設した先端医療センターと、今回の救命救急センター・外傷センターの完成で、ハードウエアの整備計画は一段落した。今後は、土日曜日に医療機能を止めない、「7days hospital service」の体制整備を進めていく。これまでは土曜日は半日診療、日曜日は救急外来機能だけが働いていた。これを手術、健診、治療の医療機能のすべてを土日曜日にも稼働させ、地域の医療と健康を休むことなく支援していく。医療従事者の働き方改革が始まるため、今後これをうまく利用して取り組みたい。土日曜日以外を休日とする医療従事者が、交代して勤務する体制を敷ければ、当病院の約2000人の従業員がこれまでのように土日曜日に一斉に休むよりは、週7日間の医療サービス提供機能を維持する効率は確実に高まると考える。新たな先端医療センターと救命救急センター・外傷センターの稼働率を高めるうえでも、「7days hospital service」は効率が良い。ただし、7日間の稼働を維持するためには、看護師の増員が必要にはなる。

―― そのためには20年に開学した湘南鎌倉医療大学が重要な役割を果たす。
 篠崎 そのとおりだ。同大学は、22年度に第3期生(100人以上)が入学した。24年度からは第1期生を卒業生として輩出する。卒業生全員が当病院に勤務するわけではないが、看護師の不足を補う力として期待される。22年度からは大学院(看護学研究科看護学専攻博士前期・後期課程)を設置しており、1期生12人が入学している。その後も、場所を確保できれば、例えば臨床工学士、医学物理士などの学科を新設したい。医療大学として、必要な学部、学科を増やしていく。
 同医療大学は湘南鎌倉総合病院とは別の場所にあるが、少し手狭になっている。そのため、今後病院の敷地を増やしたいと思っている。詳細は未定だが、学校や教育、あるいは企業との研究機能を拡充していきたい。当病院は、隣にある湘南ヘルスイノベーションパーク(武田薬品工業が湘南研究所を開放して設立した企業発のサイエンスパーク)とともに色々な情報発信をしようと取り組んでいる中で、その新たな土地が重要になる。当病院が隣にあることでベンチャー企業などの発明が市場に出るきっかけとして大事になる。当病院がそういう立ち位置を拡充し、それを利用してもらいたい。
 湘南鎌倉総合病院は地域医療で頼られ、「断らない医療」の重要性が受け入れられている。医療従事者も育っており、教育環境としても重要性が増している。今後も地域の期待に応えたい。

(この稿続く)
(聞き手・笹倉聖一記者)

サイト内検索