商業施設新聞
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No.917

ECの失敗からロボットを考える


高橋直也

2023/8/8

 ECでスニーカーを買ったら失敗した。注文して2日目、待ちに待った商品が届いたのだが、箱を開け、商品を見て唖然。WEBの画像では気付きにくい、スプレーで吹きかけたような模様が入っていたのだ。シンプルな靴が好きな人間としてはかなり抵抗がある。すると、丁寧なことに返品依頼書が同梱されていた。着払いで宅配事業者が集荷をしに来てくれるらしい。スプレー模様以外は素晴らしかったので悩んだが、結局返品した。これを書いた前日に宅配事業者が集荷に来てくれた。大変申し訳ない気持ちだ。

 店舗に対する罪悪感もあるが、宅配事業者に対する罪悪感が強い。というのも、集荷に来てくれた人が少し前、自宅マンションの玄関で疲れた様子でため息をついているのを目撃していたのだ。確か時間は昼時。一番暑い時間帯だ。疲れている人の仕事を増やしてしまった。大変申し訳ありません。

 商業記者としてはここから物流における2024年問題について考えてしまう。メーカーや店舗からすると、返品はかなりの無駄であり、コストになる。日本は国土が狭いのでまだマシらしいが、アメリカなどではECの返品を無料にすると、利益をかなり圧迫すると聞いたことがある。小売業界の今後の業績を予測するうえでも、24年問題として物流コストがどれだけ利益を圧迫するか注目されている。店舗スタッフの人件費も上昇しているので喫緊の課題だろう。いかに手間や工程を削減するか。

 ロボットの活用が解決のカギになるが、まだまだロボット黎明期ということもあり、手探り感は否めない。某外食店で配膳ロボが商品を持ってきてくれたと思ったら席から少々離れたところで止まってしまい、歩いて取りにいったこともある。取材先でこの話を披露したら「あ!それ○▽の店でしょう!」と同じ経験をした人がいることも分かった。

「エビノスパゲッティ」の調理ロボット
「エビノスパゲッティ」の調理ロボット
 そうした中、ロボットの活用において印象的なのが(株)プロントコーポレーションだ。同社は2022年5月に東京駅前・丸ビルにパスタ自動調理ロボットを導入した「エビノスパゲッティ」をオープンした。先日、東京駅近くで取材があったので、取材後にランチで使ったが、ロボットはバックヤードで淡々とパスタを作っていた。店内からロボットがパスタを作っている様子が見えるため、スマホで撮影しているシニアもいたがバックヤードにいるため、意識しないと目にすることはない。ロボットは珍しさから集客要素に活用できなくはないが、あえてこの店ではそうした使い方はしていない。というのも、プロントは様々な商品を発売してきたが、もの珍しい商品は一時的に集客に貢献するが、珍しいだけでは2度目の利用につながらなかったそうだ。リピートされるのは「おいしい商品」であり、求められるのは味や質なのだ。

 24年問題も相まって、ロボットの活躍するシーンが広がるかもしれないが、ロボットは「使い方の上手・下手」があると聞く。そういう意味で、プロントは上手な使い方をしていると言えそうだ。業務効率化に向けて待ったなしの今、『上手な使い方』が求められ、これが様々な業務効率化につながるはずだ。
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