電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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市況や供給網のあり方を議論


~レビュー Global Semiconductor Day Summer 2023~

2023/7/14

 大手調査会社のOMDIAは6月22日、ハイブリッド型のセミナーイベント「Global Semiconductor Day Summer 2023~変化する半導体サプライチェーン 日系企業のとるべき戦略~」を開催した。サプライチェーンの見直しを含めた半導体産業のレジリエンス(強靱性)強化に加えて、今回は国内半導体産業でも急務となっている人材育成にも焦点を当てた。また、足元では調整が続く半導体市場の底打ちタイミングについても、積極的な議論が交わされた。

当日は会場だけでなくオンラインでも多くの参加者が聴講した
当日は会場だけでなくオンラインでも
多くの参加者が聴講した
 「半導体産業におけるアカデミアを活用したオープンイノベーション戦略」と題して、最初に登壇した東京工業大学 副学長(産学官連携担当)の大嶋洋一氏は、特許情報から各国の半導体研究開発状況を分析。日本の研究開発活動は横ばい傾向が続くものの、大学の半導体分野における特許面での貢献度が低いと指摘。より貢献できる余地や仕組みを作っていくことが重要だとした。

 そのうえで大学をハブにしたオープンイノベーションを推進していく必要があるとして、オープンイノベーション機構の整備や協働研究拠点など、現在すでに取り組みが始まっているものについても紹介した。

 続いて、経済産業省商務情報政策局情報産業課 デバイス・半導体戦略室長の萩野洋平氏は「半導体・デジタル産業戦略の最新情報および今後の方向性について」と題して、現在政府が推し進める政策や戦略についての紹介を行った。6月に改訂版が公表された「半導体・デジタル産業戦略」をもとに、日本の半導体産業復活に向けた基本戦略などを解説した。

 ロジック、メモリーなど先端半導体の製造基盤確保に向け、Rapidus(株)の設立やメモリー企業への支援に触れたほか、パワー半導体をはじめとする産業用スペシャリティー半導体の強化にも積極的に乗り出していく姿勢を示した。

 「2023年の半導体市場の需要はどうなっている、今後注目すべき市場・地域は?」と題して、OMDIAコンサルティングディレクターの杉山和弘氏も講演。足元で半導体不足は解消しているものの、レガシー世代で一部タイト感が続いていると指摘。そのうえで現在のダウンサイクルは23年7~9月期までで、その後回復に向かうとした。マクロ情勢も改善し、総じて24年は回復局面になると結論づけた。

 また、半導体市場として米国、中国は規模が大きい。米中対立下でも、欧米企業は中国ビジネスを推進しており、日本企業も状況を正しく判断し事業を展開していくことが必要だと解説した。

 「半導体をめぐる地経学」として動画出演した東京大学大学院教授で地経学研究所長の鈴木一人氏は、地政学と経済学を組み合わせた地経学の観点から、安全保障において「電子化」が進み、半導体が占める重要性が増していると指摘。そのうえで国内平和と安全を目的としていた輸出管理が、22年10月7日に米国政府が打ち出した対中半導体規制を境に変わったとしている。国際的ではなく、米国の安全保障を目的とした輸出管理を可能にしたことで、今後も先端半導体を中心に輸出管理は強化されていく方向性だと示した。

 OMDIAシニアコンサルティングディレクターの南川明氏は「マクロ経済予測と電子機器の回復時期を予測」と題して講演。23年は失業率の低下や大手企業の潤沢なフリーキャッシュフローをベースに、米国経済が世界を牽引しているとして、半導体市場もデータセンターやGX投資を中心に新たな成長サイクルに入っているとの見解を示した。一方、日本も足元の円安で半導体産業にとってはメリットが大きく、日本での投資を計画している外資系企業にとっても有利な状況になるため、投資を呼び込む好機だとした。

 最後のパネルディスカッションでは「半導体市況回復のタイミングを探る」をテーマに、三菱UFJモルガンスタンレー証券(株)の和田木哲哉氏、JSR(株)名誉会長の小柴満信氏、ローツェ(株)代表取締役社長の藤代祥之氏がパネリストとして登壇。足元の市況感についての議論のほか、地政学リスクが増大するなかで日系企業がとるべき方策や取り組みについての意見交換もなされた。
(編集長 稲葉雅巳)


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 本セミナーの詳細・参加申し込みはhttps://omdia.oatnd.com/global-semiconductor-day-summer2023まで。
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