商業施設はアフターコロナへ向けた取り組みに移っているものの、人々の健康維持・増進が重要であることに変わりはない。健康の大切さを実感する3つの記者発表会へ参加したので紹介する。
1つ目は、(株)日立ソリューションズ(東京都品川区)による「リシテア/女性活躍支援サービス」の発表である。同サービスは、女性特有の悩みについて、現役看護師や助産師への相談が可能になり、女性の「働く」と「健康」の両立支援に貢献する。商業施設で働く女性にも有用である。同社はこの新サービスによって、フェムテック分野へ進出した。
日立ソリューションズが、女性従業員約70人を対象に実施した新サービスの社内検証(2022年6~9月)では、「家から相談できるため、保健センターや病院よりも気軽に利用できる」「会社や家族にも相談しにくい内容を相談できて良かった」と、利便性の高さや心理的な安心感を高評価する声が寄せられた。
同サービスは、プライベートを厳守し、女性が勤務する所属企業を通すことなく直接相談が可能なことも高評価の要因だ。相談予約はスマホからチャットで手軽にできる。働く女性が心身ともに健やかに、イキイキと働き続けられる環境づくりを支援するこのソリューションサービスは、女性活躍の時代に貢献するに違いない。
リシテア/女性活躍支援サービスでは、同社が提携した日本最大規模の周産期医療機関である医療法人葵鐘会(きしょうかい)に所属する看護師や助産師に対して、女性従業員が直接ビデオ通話で、女性特有の健康に関する相談ができる。同サービスにより、女性が仕事や育児の事情から放置しがちだった体の不調に早期に対処できるようになり、仕事の効率や成果の向上や心理的安全性の確保が期待される。女性特有の健康課題に関する専門情報も提供する。商業施設で働く女性にも役立つだろう。
2つ目は、米国の医療機器メーカーResMed(レスメド)によるCPAP(=Continuous Positive Airway Pressure、持続的気道陽圧)治療機器の発表だ。同社によると、コロナ禍での生活様式や働き方の変化により、睡眠に悩みを抱える人が増えているという。一方で、睡眠時無呼吸症候群や睡眠障害による症状・不調に対し、積極的に治療を行う人はまだまだ少ないのが現状である。その中で、AHI(1時間当たりの無呼吸・低呼吸の回数)が15以上の中等度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の潜在患者数は日本でおよそ900万人と推定され、数多い。
そこで、発表された最新のCPAP治療機器の「AirSense 11」は、より多くの閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者自身が自宅などで治療を開始し継続できるように開発されたという。「睡眠治療は上手くいっていますか?」「今週の眠気はどうでしたか?」といった簡単な質問に対する患者の回答に基づいて、患者の治療の段階に合わせたガイダンスを提供する。
切れの良いダンスを踊る
原菜乃華さんとパワーパフボーイズ
同製品の発表会では、東京の虎の門病院 睡眠呼吸器科の富田康弘医長が、遠隔モニタリングやデジタル・ヘルス・テクノロジーなどの活用を含めたCPAP治療の最前線と、患者エンゲージメント(治療に患者自身の積極的関与を促進し支援すること)およびアドヒアランス(医療者と患者が相談して治療法を決めることにより、患者の治療への積極的な参加を促し、治療成功を目指すこと)の向上について講演した。睡眠と呼吸は人間の基本動作で、正常であることが重要だ。同機器は、商業施設で働く多忙な人たちの健康と、睡眠も支えることができるだろう。
健康の重要性を再認識させられた3つ目の発表は、(株)丸亀製麺(東京都渋谷区)による「丸亀シェイクうどん」(振って混ぜて食べる持ち帰りうどん)の発表会(5月9日)だ。CMで起用された女優の原菜乃華さんと、SNSでも人気のダンスグループ「パワーパフボーイズ」が、CMと同様の切れの良いダンスを披露し、集まった記者たちは、ダンサーたちの身体能力の高さに目を見張っていた。筆者も新鮮なシャキシャキ野菜が入ったシェイクうどんを食べて健康を増進し、あのような切れの良いダンスを踊ることができる体力を取り戻したいものだと感心した。ところが、商品発売1週間後に、商品に含まれる野菜があまりにも新鮮だったのか、長崎県の店の商品にカエルが混入してしまったことを親会社の(株)トリドールホールディングスが公表し、謝罪する試練が待ち受けていた。工場での原因調査や、再発防止策、検品強化の行方はさておき、発表会で披露されたダンスの切れの良さは、ダンサーたちの日ごろの鍛錬および健康管理・増進の賜物だろう。あやかりたいものだ。集まった記者たちも同感だったに違いない。
日立ソリューションズ、レスメド、丸亀製麺と一見つながりのなさそうな会社および商品の発表会だったが、健康の重要さを考えさせられる点で共通していた。商業施設で働く人たちにとっても健康維持・増進は、接客と同様に重要な営みだ。アフターコロナとはいえ、健康指向商品の需要と供給は高まるばかりだ。