埼玉県秩父市で、今後の街づくりの新しい形になるかもしれない取り組みが行われた。それは(株)秩父まちづくりが手がけ、8月5日に開業した「NIPPONIA 秩父 門前町」だ。古民家3棟をリノベーションし、宿泊施設へと生まれ変わらせることで、観光客の滞在などの賑わい創出、地域の活性化に貢献する。ポテンシャルを感じる取り組みであるため、ぜひとも紹介したい。
NIPPONIA 秩父 門前町の場所は、西武秩父線の終点・西武秩父駅から徒歩7~8分のところ。秩父神社参道の番場通り沿いにあるKOIKE・MIYATANI棟と、秩父神社から徒歩約3分のMARUJU棟で構成する。KOIKE・MIYATANI棟は小池たばこ店と、それに併設する宮谷履物店を、MARUJU棟はマル十薬局をそれぞれリノベーションし、モダンな昭和建築の外観はそのままに、昭和を題材にした映画のセットに使われてもおかしくない雰囲気を持つ、趣のある宿泊施設へと生まれ変わった。
KOIKE・MIYATANI棟は客室計3室と併設のカフェ、MARUJU棟は客室計5室とレストラン、フロントを設置。MARUJU棟は主屋に加え、離れや蔵もリノベーションしており、これらにも宿泊することができる。KOIKE・MIYATANI棟は1階部分に2室、2階部分に1室を設けている。重厚なつくりの外観からは歴史が感じられ、その雰囲気のまま中に入ると、懐かしくもあり新しくもある独特な空気感に圧倒される。このギャップが、秩父での滞在をさらに盛り上げてくれる。KOIKE・MIYATANI棟の周辺は土産物屋や飲食店なども点在しており、ここを散策するのも楽しいだろう。NIPPONIA 秩父 門前町と同様に古い建物をリノベーションしたであろう店舗も散見される。
こうした建物ができることにより、空き家問題など社会問題の解決の一助にもなる。筆者が周辺を歩いた際、家主がいないのではないかというところもいくつかあった。秩父は人口減少が目立つ地域でもあり、観光資源はあるとしても街として元気があるかと言われれば、そうではないと思う。今回のNIPPONIA 秩父 門前町はこうした問題にも対応するだろう。
今回の取り組みは第1弾ということで、この後第2、3弾も注目される。古い建物は、いわばどこにでもあるもの。それをうまく活用し、収益が上がるビジネスモデルに転換できれば事業者も街も利用者も、みんながハッピーになれる。すべてを新しく作り変えるのも悪くないが、その土地に合った再生方法で新たな賑わいが生まれることに期待したい。