「サッポロファクトリー」は、(株)サッポロビール「札幌第一工場」跡に開発された商業、オフィス、ホテル、シネコンなどからなる複合施設。近年はスポーツ・アウトドアにMDをシフトし誘客に成功している。同施設は札幌市内の中心部を流れる創成川の東側に位置し、通称「創成イーストエリア」の活性化にも取り組む。サッポロ不動産開発(株)取締役執行役員 札幌事業本部長の細川恭伸氏に聞いた。
―― 施設の概要から。
細川 1993年開業で、来年30周年を迎える。1条館、2条館、3条館、西館、レンガ館、2006年に開業したフロンティア館からなり、オフィスと商業などの複合施設でオフィスが約30社、商業が約120店入居している。レンガ館が耐震化工事中のため、現在休館しており、その分テナント数は減っている。
―― 専門性を追求しています。
細川 開業当初からテナント構成が大きく変わった。当時は大型テナントが多かったが、20年前からアウトドアを強化し、「アウトドアやスポーツを買いに行くならサッポロファクトリー」が浸透している。5月に札幌初出店となったスノーピーク、6月に北海道初進出となったオガワグランドロッジが出店したことで主要アウトドアブランドが揃い、ラインアップが一層充実するともに、他の出店テナントは相乗効果に期待している。
またファッションを縮小し、19年にレディースファッションのカテゴリーがほぼゼロになった。レディースはファッション雑貨の店舗に少しある程度で、アウトドア・スポーツの中から選んでいただいている。本格的なレディースファッションが欲しい人は札幌駅のJRタワーや百貨店に求めに行く。同じ土俵で勝負しても仕方がないし、強みを活かすMDにしていくことが重要で、“何でもあるけど何もない”が最もダメだ。
―― ECの影響は。
細川 アウトドアのすそ野を広げるため、テント張り方教室や、おいしい焼鳥の焼き方など多彩なテーマのイベントを開催し、デベロッパー・テナントが一緒になって盛り上げる。ハードだけではなくソフト面をいかに充実させるかが我々の使命である。
店舗に足を運びたくなる理由をつくることも重要だ。例えばイベントを開催することでテナントスタッフと仲良くなると、そのスタッフに会いに来て、会話を楽しんで買って帰られる。それがリアル店舗とECとの違いである。
―― コロナの影響も大きい。
細川 コロナ禍になって価値観、生活スタイルが変わり、それに合わせた施設づくりが不可欠だと痛感した。アウトドアブランドを集めわざわざ来たいという動機を作るのは当然だが、用がなくても来たいという施設にしたい。我々はサッポロファクトリーのスローガンに「公園みたいに、なりたいな。」を掲げる。いい街にはいい公園がある。札幌には大通公園があり、創成イーストにはサッポロファクトリーがあることで、多くの人が集える気持のいい空間になり、気兼ねなく過ごせる施設にすることで、創成イーストに住むことが選択肢になる街づくりが我々の使命。それがアウトドアによる集客や、公園というコンセプト。おかげさまで創成イーストの人口が増えている。
―― コミュニティづくりですね。
細川 日々足を運んでもらうコミュニティの考え方がコロナで強くなった。ここに来てもらうことで新しいコミュニティが生まれるような仕掛けをつくっていく。その一環として21年から近隣の方にファクトリーの敷地内で花を育てていただくイベント「マイリトルガーデン」を始めた。
―― 第4駐車場に新棟計画があります。狙いは。
細川 北4条に計画している。1、2階が商業、3~8階はオフィスで、完成は24年8月ごろ。街づくりの一環として創成イーストで新しい働き方をしていただきたい。オフィスも広い面積をワンフロアで使用できるので、価値は高い。色々なワーカーが集まることで、色々な価値、文化が生まれることに期待する。
―― 商業は。
細川 札幌市と協議しており、市は東4丁目道路の活性化や賑わいを創出したい意向で、飲食、物販でMDを組み上げていく。住んでいる方に利便性が高まったと思ってもらえ、活力が溢れる街となる一助になりたい。ただ、1社ではできない。色々な企業と手をとりながら街づくりをしていくことが重要だ。行政、パートナー企業と連携し、いかに創成イーストを盛り上げていくかが、これまで以上に大切になる。
(聞き手・特別編集委員 松本顕介)
商業施設新聞2459号(2022年8月23日)(2面)