商業施設新聞
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第508回

(株)パルコ ゲーム事業開発部 部長 西澤優一氏


ゲームパブリッシングが本格化
施設使ったプロモなど独自の強み

2025/12/23

(株)パルコ ゲーム事業開発部 部長 西澤優一氏
 今年8月、(株)パルコがゲームパブリッシャー事業に参入すると発表した。インディーゲームデベロッパーと協業し、ゲームの発売、開発費の支援などを行うもので、11月には2タイトルが発売され、事業は本格化している。パルコでは以前からeスポーツやゲームとのコラボイベント、ポップアップストアなどを積極的に進めていたが、商業デベロッパーがゲームのパブリッシャーになるというのは業界初の取り組みとなる。ゲーム事業開発部部長の西澤優一氏に参入の背景や商業施設とのシナジーなどについて話を聞いた。

―― ゲーム事業開発部が発足した経緯から伺います。
 西澤 もともとパルコは演劇、映画などコンテンツを展開しており、カルチャーの発信に注力してきた。そうした中、ゲームというコンテンツは近年市場が急激に広がっており、特に海外では日本のゲームの売り上げも伸び、インバウンド客もこうしたコンテンツに注目している。
 そうした中で、2023年9月に、エンタテインメント事業部内でコンテンツ担当ゲームチームが発足した。この時は漠然とゲームというコンテンツを使って何か新しいことをやろう、というような方針で、はっきりとした計画があるわけではなかったが、その後様々なコラボイベントなどの企画を経て、24年9月にゲーム事業開発部として独立し、現在に至る。

―― 部署を立ち上げてからどのような取り組みをしてきたのでしょうか。
 西澤 ゲームと関係するコラボイベントやポップアップストアなどの企画を実施してきた。直近で行った「DEATH STRANDING 2」のイベントでは、メーカーのコジマプロダクションと密接に協力し、オリジナルグッズやコラボメニューなどを企画した。19年に開業した渋谷PARCOの「Nintendo TOKYO」は現在も人気テナントで、こうした実績も当社がゲーム事業へ注目する判断に影響を与えていると思う。

―― そこからゲームパブリッシャー事業へ参入するわけですが、意外性のある決断にも思えます。
 西澤 実はそれほど意外性のあることだとは思っていない。我々がこれまでゲームとのコラボイベントを企画してきた際には、ゲームの世界観を理解し、グッズや空間演出の提案をしてきた。またゲームにはプロモーションが必要になるが、我々は商業施設でのプロモーション、情報発信についてのノウハウもある。こうした経験は、いわばゲームに対して編集者的な立場として関わることでもあり、ゲームパブリッシングの分野でも応用できると考えている。

―― ゲームパブリッシャー事業の現状について教えてください。
 西澤 現在25年度内に3タイトルを発売する計画で、うち「The Berlin Apartment」「Constance」は11月に発売した。発売するゲームについては、インディーゲームデベロッパーの方からの持ち込みも受け付ける一方、我々が様々な機会を通じて発掘し、こちらからお声がけすることもある。国内のゲームデベロッパーだけではなく、アジアや欧州など様々なところに注目している。

―― 商業施設運営などとのシナジー効果については。
 西澤 我々が持つ商業施設のリアル店舗は、ゲームのプロモーションの場として大きな効果があると考えている。インディーゲームは大手企業のゲームと比べ、プロモーションで苦労があるが、パルコのリアル店舗を一種のメディアとして活用できるというのは、ゲームパブリッシャーとしての大きな強みだとも考えている。
 また我々は演劇など、ゲーム以外のエンタメ分野についても実績がある。ゲームコンテンツの演劇化などのクロスオーバーはすでに実施済みで、今後も様々なメディアミックスについて可能性があると思っている。
 加えて施設単位だけでなく、例えばエリア開発が進む名古屋などではエリア単位でプロモーションやコラボなどもできると思うし、J.フロント リテイリングとしてeスポーツ事業にも参入しているが、そうしたところとの協業もできるのではないか。

―― ゲームパブリッシャー事業の中長期的な見通しは。
 西澤 現在は主にインディーゲームデベロッパーの方々と協業し、そのパブリッシャーを担う形になっており、その方向性での成長を見込んでいるが、将来的にはゲームの開発にも関わっていくことを計画している。現状でも開発費について出資し、コピーライトに(C)PARCOと記されているものがあるが、それをさらに進め、共同開発という形で関わり、独自IPを創出するところまで実現していきたい。



(聞き手・編集長 高橋直也/山田高裕記者)
商業施設新聞2626号(2025年12月16日)(5面)

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