カネ美食品(株)(名古屋市緑区)は、スーパーマーケット(SM)や駅ビルなどへ出店する「テナント事業」と、コンビニエンスストア(CVS)向け商品の製造・納品などを手がける「外販事業」の2軸で事業を行っている。テナント事業では総合惣菜のKanemiなどを展開。今後は洋風惣菜のeashionに注力し、新業態の投入も間近だ。同社代表取締役社長の園部明義氏に聞いた。
―― 前期の振り返りと足元の状況から。
eashionの出店を拡大する
(写真はグランエミオ所沢店)
園部 前期は新型コロナ2年目となったが、前々期(21年2月期)に大きく落ち込んだ部分を回復させたことと成長させたことが相まって、売上高はテナント、外販ともに前期を上回り、利益面も大幅に改善した。テナント事業は、お客様の購買行動に対応した商品提供、夕方以降の製造調整などを行い、適切な利益が確保できた。
今期は順調な滑り出しとなったが、時代の流れやお客様の購買行動の変化に細かく対応し、トライ&エラーを重ねながら様々なチャレンジをしていく。
―― 現在の店舗数と業態は。
園部 前期末時点で、ユニー店舗へ出店しているKanemiの133店、UDリテール店舗へ出店している総合惣菜のRe'z deliの47店、駅立地を中心とするeashionの33店をメーンに、計271店を展開する。そのほかの業態は、洋風惣菜のK-STAGE、寿司専門の寿司御殿、唐揚専門のとりから御殿、総合惣菜のe'z martやease deliなどがある。
前述のRez deliは、PPIHグループのUDリテール運営店に展開していた総合惣菜のKanemiをブランド転換したもので、21年12月にすべてのブランド転換が完了した。
―― eashionの積極拡大を掲げています。
園部 23年2月期はeashion拡大の初年度と位置づけ、体制の変更も行った。これにより積極的な出店に踏み切っていく。既存のeashionの拡大に加え、新業態の出店も計画している。
新業態はeashion BOWL(以下、BOWL)という米飯特化業態で、8月に東京・錦糸町に1号店をオープンする。既存のeashionは駅立地や駅を軸にしたロケーションが多いが、BOWLは既存のeashionほど面積を必要としないため、従来の駅立地に加え、狭小立地への出店も可能。機動的な店舗展開ができるブランドに育て、常設店だけでなく催事も含めてトライをしていく。催事出店することでさらにブランド力を高め、常設出店へとつなげる。
―― BOWLの特徴は。
園部 eashionから米飯(弁当など)部分を切り取ったものとなるが、ただ単に切り取ってそのまま出店するのではなく、切り取った上でスタイルもガラッと変え、既存のeashionとは全くの別物となる。揚げ物、サラダ、弁当など様々なカテゴリーが揃ってeashionだと考えていて、揚げ物だけやサラダだけといった切り売りはしてこなかった。だが時代が変わり、お客様の購買行動も変化する中、BOWLはお客様のニーズに対応した店とする。
―― 狭小エリアへの出店で工夫することは。
園部 BOWLはセントラルキッチンや真空調理なども駆使しながら、いかに店舗の作業軽減をさせるか。店舗では最終調理だけを行い、独自性と個性を出しつつ、クイックに提供できる体制構築を目指す。
販売する商品はBOWLの名のとおり「丼」で、ボックス型の弁当をイメージしてもらいたい。メーン食材は魚、野菜、肉から、米は白米、雑穀米をお客様の好みにカスタマイズでき、選べるサイドメニューのスープとのセット販売も行う。
10月に誕生から20年を迎えるeashionのメモリアルな年に、新業態および積極展開に取り組み、現在の33店を早期に50店、100店へと引き上げたい。今期の出店は期初段階でeashion5店のほか、総合惣菜2店の計7店としているが、期初計画以上の出店数を目指したい。機動的な出店ができれば、期初計画以上も十分可能だ。
―― 中食業界の展望と競争に勝ち抜くためカギとなることは。
園部 中食業界はまだまだ伸びていくと思っている。一方、プレーヤーは増え、競争は激しさを増す。その中で当社は「売り物」ではなく「売り方」を重要視する。盛り付けや色使いなどで見せ方を工夫して、お客様の購買意欲をそそる販売方法を実践し、お客様が商品を口に入れるまでのストーリー=売り方というのが勝敗を分ける。そこに注力し、愚直に「美味しい」をカタチにすることで、競争に勝っていきたい。
(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2455号(2022年7月26日)(5面)
商業施設の元気テナント No.247