電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内

半導体産業の成長力を徹底討論


~レビュー Global Semiconductor Day Spring 2022~

2022/6/10

 大手調査会社のOMDIAは5月26日、日本経済団体連合会(経団連)の後援を受け、激変する半導体産業の今後や新たな成長などに焦点を当てたオンラインセミナーイベント「Global Semiconductor Day Spring 2022 ~ポストコロナのグローバル半導体産業・最新動向~」を開催した。半導体産業の主要企業・団体の専門家・有識者によるセッションとパネルディスカッションを通して、将来像などについて議論が交わされた。

 経団連専務理事の根本勝則氏の挨拶に続いて登壇したOMDIAシニアコンサルティングディレクターの南川明氏は「世界のDX/GXで半導体需要はどこまで成長するか」と題して講演した。IoTをベースとしたスマート社会が高齢化やエネルギー不足、都市集中化、水・食料・医療の不足といった課題を解決すると話し、半導体市場が次の成長期に入っていることを解説。カーボンニュートラル政策やメタバース実現に向けた投資が拡大するなかで、円安で日本の半導体産業が長期的なメリットを受けると指摘し、シェア回復のチャンスが30年ぶりに訪れていると述べた。

 続いて、経済産業省商務情報政策局情報産業課長の西川和見氏が「これまでの半導体産業戦略と今後の製造基盤強靭化に向けて」と題して講演。半導体・デジタル産業戦略検討会議などを通じて、日本半導体産業復活の基本戦略を描き、TSMC誘致などに取り組んできたことを紹介しつつ、半導体サプライチェーンが不安定化するなか、今後は製造装置や素材についても生産基盤の強化を通じた確保が必要になるとの見解を示した。日本が次世代半導体に参入するラストチャンスであり、その実現には異次元の取り組みが必要だと述べ、日米のパートナーシップや産官学一体での人材育成に一層力を入れていくと語った。

 「高まる地政学リスクと中国を中心とするサプライチェーンの再編」と題して講演した東京財団政策研究所 主席研究員の柯隆氏は、ロシア/ウクライナ問題やゼロコロナ政策、若年層の失業率上昇、恒大集団の破綻などを例に、中国の高度成長期が終了したことを説明。今後の安定成長に向けては、サービス産業の充実や第4次産業革命とデジタル産業の発達が中国にとってますます重要になると語り、世界の「工場」から「市場」へ転換する努力が必要と述べた。

 OMDIAコンサルティングディレクターの杉山和弘氏は「2022年の注目市場動向分析、動き出したDX/GX投資を紐解く」と題し、車載とデータセンター(DC)市場の成長が半導体の成長を牽引していくと語った。車載半導体市場は26年までのCAGRが14.7%と高成長を継続。通信の遅延を抑えるためエッジDCが拡大し、ロジック分野でArmやRISC―Ⅴの攻勢が始まったことにも言及した。

 (株)SUMCO代表取締役社長の阿波俊弘氏は「新しい成長段階に入った半導体産業」と題し、300mm先端プロセス用を筆頭にシリコンウエハーも高い需要増加が続く見通しを解説した。DCや車載といった新しい半導体用途がウエハー需要を押し上げ、22~26年のウエハー需要は枚数ベースでCAGR9.4%と予測して能力増強に取り組んでいる背景を説明した。

 柯隆氏に日本経済新聞社本社コメンテーターの中山淳史氏と、東海東京調査センター 企業調査部シニアアナリストの石野雅彦氏を加えて行われたパネルセッションでは、22年の世界経済・半導体市場を改めて展望した。

 中国の22年の経済成長率が4%台にとどまるとみている柯隆氏は「中国は外交政策の転換が必要」と述べ、ルールベースの国際社会に対応していく必要性に言及した。中山氏は、22年夏以降の旅行の予約が大きく伸びている現状から「コロナが沈静化すれば、リベンジ消費の拡大が見込める」と下期の見通しを語り、これらを受けた石野氏は「日本はかつてないほど世界から注目される国」と述べ、昨今の円安、エンジニアの質や給与水準などから海外企業のさらなる進出が大いに期待される未来を展望した。

 日米の半導体産業協力関係構築は、メリットもあればデメリットもあることを認識する必要がある。中国市場を切り離したビジネスができない企業は、日本にも多く存在する。米国のペースに巻き込まれると、日本企業が中国ビジネスから追い出されてしまうリスクを常に考えておく必要がある。
(聞き手・特別編集委員 津村明宏)


 本イベントは6月30日までオンデマンド配信中。詳細はhttps://omdia.oatnd.com/global-semiconductor-day-spring2022まで
サイト内検索