2021年12月の年の瀬にニュースが2つ舞い込んできた。1つはSCRAP(東京都渋谷区)によるリアル脱出ゲーム 歌舞伎町探偵セブン「ようこそ、ゼペット教授の異常犯罪相談室へ」の取材・先行体験の案内。もう1つは静鉄プロパティマネジメント(静岡市葵区)が運営する商業施設「新静岡セノバ」で、21年5月から働き方改革制度を導入している店の売り上げが上向いていること。両方とも商業界にとって良いニュースで、オミクロン株で22年の社会経済の見通しが不透明となる中、光明が見えた気がした。
「ようこそ、ゼペット教授の異常犯罪相談室へ」は、参加者が「セブン探偵事務所」の新人探偵となり、未解決事件を推理する体験型ゲーム・イベントで、事件の殺人犯が残した証拠や、不可解な行動をひも解くために、凶悪犯「ゼペット」に助言を求めながら推理するというストーリー。ゲームの所要時間は約100分で、リアルの天才ハッカーが謎解きに協力してくれる。優れた作品を顕彰するメディア芸術の総合フェスティバルである「第22回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 優秀賞」を受賞した「歌舞伎町探偵セブン」シリーズ待望の最新作ということで、筆者はワクワクしながら参加してみた。100分にも及ぶリアル脱出ゲームを体験したのは初めてで、おじさん記者である筆者は疲れ果ててしまったが、推理力やひらめき、機転、チームワークが要求され、取り組み甲斐のあるゲーム取材だった。22年のリアル脱出ゲームの話題作となり、アミューズメント(AM)産業を刺激するだろう。謎解きイベントという特性上、ネタバレが禁止されており、多くを記述することを制限されているが、正月休み明けの重い身体と、働きの鈍い勘を刺激してフル稼働させたい人にはもってこいのAMであり、一度プレイされることをお勧めする。場所はリアル脱出ゲーム東新宿店(新宿区大久保)で、チケット料金は、平日は当日券が一般3500円(税込み)、土日祝&ハイシーズンは300円高い。
一方、静鉄プロパティマネジメントのニュースは、新静岡セノバ(テナント数約140店)で21年5月からフレックスタイムや時間短縮の働き方改革制度を導入した店の売り上げが、導入していない店よりも上り調子であるという内容。テナントの業種・業態、各ショップの集客にあった接客・働き方を提案する「トライ!はたらく時間PROJECT」として実施しているもので、SCとしては珍しい(1)営業時間フレックスタイム制度、(2)パワーチャージ休暇制度、(3)営業時間短縮の3つに取り組んでいる。静鉄プロパティマネジメントでは、導入後の売り上げ実績を、フレックスタイム制度の参加店舗、時間短縮に参加した地下1階の食物販ゾーン、時間短縮に参加したフードコートに分けて算出した。
すると、館内の衣料品業種店全体の売上高は、コロナ禍の21年5月から11月の間に前年比76.0%から87.6%で推移したのに対し、フレックスタイム制度の参加店舗では、同期間の売上高が前年比81.1%から92.0%となり、フレックスタイム制度参加店舗の方が上回った。また、地下1階の食物販ゾーン全体の21年5月から11月の売上高は前年比87.9%から104.9%だったのに対し、時間短縮制度を導入した同階の食物販店の同期間の売上高は前年比111.1%から118.8%で推移、これも時間短縮制度を導入した店舗の方が売上高が伸びたという結果となった。フードコートは、時間短縮店の売上高が21年5月から10月までが前年比76.9%から85.4%で、同期間の飲食店全体平均の同67.6%から83.9%を上回ったが、同年11月には時間短縮したフードコート(前年比77.8%)が飲食店平均(同78.6%)を下回る結果となった。これにより新静岡セノバでは、全般的にフレックスタイムや時間短縮制度を導入した店舗の方が売り上げを得る効率が良かったことが証明された。労働時間短縮などの働き方改革には無縁とみられていたSCの労働環境が同制度導入によって改善され、若者たちからの就職先として人気が高まることが期待される。働き方改革に取り組むSC産業、話題作のリアル脱出ゲームに取り組むAM産業の22年に明るさを感じた。