愛知県などが主催した「愛知県産業立地セミナー2021 IN 東京」が11月16日に東京都内のホテルで開催された。大村秀章愛知県知事が「産業首都あいちを目指して~国際イノベーション都市への飛躍~」のテーマで講演し、県の魅力や産業施策など概略を紹介した。
愛知県は製造品出荷額が43年連続全国第1位で48兆円、第2位の神奈川県の2.7倍となっている。GDPも東京に次いで全国第2位で、GDPに占める製造業の割合は全国平均が2割なのに対し、愛知県は4割となっており、付加価値の高い製造業がGDPを押し上げている。
世界一の自動車産業の集積地で、輸送用機械器具の製造品出荷額は26兆6634億円、シェア約4割を占める。EV、FCV、PHVの普及率や水素ステーションの整備数は全国1位。自動運転の実用化に向けた実証実験も進めている。豊田・岡崎地区では、650万m²の研究開発施設用地の造成を行い、3月にトヨタ自動車への引き渡しを行った。テストコース11本、研究開発棟29棟を建設し、約3000人が働く大研究団地の整備をトヨタ自動車が進めていく。
航空宇宙産業の集積も進んでいる。コロナ禍で航空宇宙産業は厳しい状況だが、ポストコロナを見据えて同産業を支えていく。
ロボット産業の集積も全国1位。これをさらに進めていくために産官学の協議会を設立した。
充実した交通インフラや割安な産業用地も愛知県の魅力である。5カ所の工業団地が造成中で、豊橋三弥が分譲中、豊明柿ノ木は関心のある企業のエントリーを受付中。用命があれば個別相談を受け企業庁で開発造成も行う。
日本トップレベルの補助制度も用意している。21世紀高度先端産業立地補助金は、補助率は工場が10%、研究所が20%で限度額は100億円。立地する市町村と連携して補助率10%、限度額10億円の再投資やサプライチェーンへの投資に対する補助制度もある。両制度合わせて372件を採択しており、総投資額は6342億円、約5万8000人の雇用を創出している。
スタートアップのイノベーションも進めている。スタートアップのインキュベーションである「ステーションAi」の整備も進める。名古屋市昭和区鶴舞の県有地約7300m²に7階建て延べ床面積約2万3000m²の施設を建設。建設費は約143億円で県が支出する。7月にソフトバンク(株)が事業者に決定。リアルとリモートで世界中から1000社のスタートアップを呼んでくる計画で、2024年10月のオープンを予定している。
大村知事は「ビジネスチャンスは『産業都市あいち』にあります。ぜひ愛知にお越しください」とし、広く愛知県への立地を呼び掛けた。
これに続いて、日本マイクロソフト(株)執行役員 チーフ ラーニング オフィサー プロフェッショナルスキル開発本部長の伊藤かつら氏が「DXを支える学びの文化」のテーマで講演した。DXはデジタルのためではなく、トランスフォーメーションのために行うものであるとし、DX人材不足の現状を紹介。今まで日本の企業は外部ベンダーに委託することでITコストを削ってきたが、パンデミック以降は社内に技術人材が必要となっているとした。学びの文化を組織、企業、人材が持っているかがこれからの成長に重要となるとし、すべてを学ぶというカルチャーを日本人が持っているので、個人が意識を持つこと、企業、組織、団体が日本変革のためにデジタル人材の育成に取り組むことが重要と語った。
進出企業からは(株)コラボスタイル代表取締役社長の松本洋介氏が「名古屋市に本社移転したIT企業が語るこれからのオフィスのあり方」のテーマで講演した。
同社はワークフロー事業を展開しており、業務プロセスのデジタル化を進めるクラウドサービスを提供している。13年7月に東京都千代田区神保町で設立。名古屋市の「本社機能等立地促進補助金制度」を活用し、20年7月に名古屋市のJPタワーに本社を移転した。移転にあたっては各オフィスを機能別に分け、テレワークも弾力的に制度を改善。自宅オフィス化支援制度を創設し、社員の自宅に投資をできる仕組みを作っている。
講演では、同社が進めている分散型オフィスの状況を紹介。オフィスの風土、制度、ツールが重要であるとし、これらを活用して「ワークスタイルの未来を切り開きましょう」と語った。
このほか、豊橋市の浅井由崇市長、豊川市の竹本幸夫市長、蒲郡市の鈴木寿明市長、常滑市の伊藤辰矢市長、日進市の近藤裕貴市長、田原市の山下政良市長がそれぞれの市の概要、魅力、優遇制度、工業団地などを紹介した。