電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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有識者がサプライチェーンを討論


~レビュー「Global Semiconductor Day」~

2021/8/13

 大手調査会社のOMDIAは8月3日、今後の半導体産業があるべき姿について議論・提言を行うオンラインセミナーイベント「Global Semiconductor Day ~今後のカギを握るグローバル半導体サプライチェーンの在り方~」を開催した。半導体産業の主要企業・団体の専門家・有識者によるセッションとパネルディスカッションを通して、グローバルの半導体市場とサプライチェーンの現状、今後の半導体産業について議論が交わされた。

 「世界の半導体産業の動向」と題して最初に登壇したOMDIAシニアコンサルティングディレクターの南川明氏は、半導体デバイス、製造装置、材料の国別シェアを整理して紹介するとともに、「人口増加」「高齢化」「都市集中化」の3大メガトレンドが環境破壊を起こしてきたと説明。これらを解決するため、IoTでスマート社会を構築することが重要だと説き、グリーン関連投資とリモートの利活用を両輪として経済成長の原動力とするべきだと提言した。また、デバイス技術に関しては、半導体や電子部品、電池やモーターなど現在個別に組み合わされている機能を3D積層で統合していくことがキーワードだと語った。

 続いて、東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授が「日本における半導体サプライチェーンの方向性」と題して、日本の半導体・デジタル産業戦略を分析した。国際水平分業を意識しながら、半導体の国産化を最終目標としなければならないなかで、現状では既存の設備や施設に足を引っ張られ、グリーン半導体需要が立ち上がるまで何でつなげていけるのかが課題だと話した。そして、向かうべき方向性の1つに「電気産業の復活」を挙げ、半導体を使う顧客としての立場を強化することの重要性を説いた。

 次に、独インフィニオンテクノロジーズでサプライチェーン改革を担当するHans Ehm氏が登壇。リーマンショックなど過去の経験から、前工程ファブの安定的な運用とサプライチェーン管理にはスピードとフレキシビリティーが重要だと語り、それゆえファンドリーやOSATまでを含めた「グローバルバーチャルファクトリー」化が必要と話した。企業間の競争という環境から、サプライチェーン競争へ時代がシフトしていることも強調。勝ち残るには「リスクを軽減し続け、チャンスを確実につかむ」ことが大切だと語った。

 次いで、業界団体を代表してJEITA半導体部会で半導体統括委員会・副委員長を務める三井豊興氏が東日本大震災や熊本地震、タイの洪水といった、サプライチェーンに影響を及ぼした災害での対応を振り返り、新型コロナのパンデミックで新たに起こった事象を整理した。業界団体として半導体業界の業務優先や渡航制限緩和、優先的なワクチン接種などをマルチレターで各国政府に要請するなどの対応をとったほか、直近では半導体の模倣品に対する啓蒙活動も強化。日本の国際競争力強化を実現するため、部会として日本政府に半導体戦略について提言した内容を解説した。

 最後の講演者は、経済産業省商務情報政策局情報産業の西川和見課長。「半導体デジタル産業戦略と今後の方向性」と題して政府戦略の概要を解説するとともに、各国が進める大規模な産業政策も紹介した。このなかで海外ファンドリーの誘致にも触れ、その狙いとして「国内部素材・装置メーカーや周辺の半導体関連企業の活況化」「先端ロジック半導体の享受」「次世代半導体の共同研究開発」「天災などの緊急時における増産対応」などへの寄与が期待できると述べた。

 講演に続くパネルディスカッションでは、鈴木教授に加え、SEMIジャパンの浜島雅彦代表と、経済同友会 副代表幹事でJSR名誉会長の小柴満信氏が参加し、「半導体サプライチェーンはどうあるべきか」を議論した。米中対立の構図は当面続くとの見方で3人が一致するなか、デカップリングに日本が注意・対処すべき点として、鈴木教授は「米中の板挟みに日本が陥らないこと」、浜島氏は「技術流出への懸念払拭に向けたルール作り」、小柴氏は「ビジネスのレジリエンスを考えること」と、それぞれの経験・立場から率直な意見を披露した。

(特別編集委員 津村明宏)



 本イベントは8月31日までオンデマンド配信中。詳細はhttps://omdia.oatnd.com/global-semiconductor-day-aug

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