商業施設新聞
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第291回

片倉工業(株) 執行役員 不動産事業部長 栗原修氏


コクーンシティ、開業後初の大規模リニューアル
エリアマネジメントも推進へ

2021/8/3

片倉工業(株) 執行役員 不動産事業部長 栗原修氏
 片倉工業(株)(東京都中央区明石町6-4、Tel.03-6832-0223)は、JRさいたま新都心駅前で約270店を集積するショッピングセンター(SC)の「コクーンシティ」を運営している。2021年は開業後初の大規模リニューアルを全3期に分けて行っており、SC周辺では大型マンションやオフィスなどが整備される中、同SCはニーズに応える施設づくり、街づくりを進める。SC運営やリニューアル、街づくりなどについて、同社執行役員不動産事業部長の栗原修氏に聞いた。

―― 足元の状況から。
 栗原 直近の21年4~6月の売り上げは、コロナ禍前の19年4~6月比で約90%と、一時期に比べだいぶ回復してきた。ただし、業種や業態によって差があり、基本的には3密回避の制約、まん延防止等措置の影響によりお酒の提供ができないなどで、サービス系のテナントや飲食店は非常に厳しい状況だ。一方、家具や雑貨など家ナカ需要に対応するテナント、食料品や食物販テナントは好調。
 家ナカ需要では、近隣に計1400戸の大型マンション群「シントシティ」が建ち、3月から入居が始まった。こうしたニーズに向け「ACTUS」「KEYUCA」などのテナントを揃えたことなどが奏功した。今後も様々な需要を見込み、取り組んでいく。

―― 今回の大規模リニューアルについて。
 栗原 15年4月にコクーン2、同年7月にコクーン3が開業しコクーンシティが誕生。そして丸6年を迎えて、テナントとの契約更新を機に大幅リニューアルを実施した。リニューアルは春に第1弾、夏に第2弾を行ってきて、年内にもう1回、第3弾を実施する予定だ。コロナ禍で当初のリニューアルプランとの変更を余儀なくされたが、これまでの営業で見えてきた好不調業種やテナント、マーケットニーズ、コロナ禍での消費動向の変化なども踏まえながら、規模は縮小しながらも戦略的にリーシングを行い、出店していただいた。リニューアル全体では30店規模の入れ替えとなる見通し。

―― 第2弾リニューアル店舗が開業しました。
 栗原 土日は集客できている中で、平日を伸ばす必要があると感じていた。そう考えたときに、足元商圏のお客様の来店頻度や買い回りの向上などを目指し、例えば食品まわりや関連する食物販の強化をはじめ、カフェ併設では埼玉県初の「ガトーフェスタ ハラダ」や「CHEESE GARDEN」の新業態店などを集積し、これまでなかった新しいシーンの創出などに取り組んだ。
 また、リニューアル前には、コクーン2の1階にあった「無印良品」が移転増床。店舗面積を大幅拡大して、これが非常に反響が良く、館全体に良い影響を及ぼした。

―― 県内初、エリア初などが多いですが、リーシングで意識したことは。
 栗原 結果的に県内初やエリア初などが多くなっただけで、特別に“初物”を意識したわけではない。例えば他のエリアで人気があったり、当館に合いそうだなと思ったものを導入した。また、テナント側が埼玉県に初めて出店するならどこにしようかと考えたとき、当館を選んでいただけるケースも見られるようになってきたように思う。当館を県内やエリア“初”の出店場所として選んでいただけるのは非常にありがたいことだ。
 我々は、「コクーンシティの運営は街づくり」と掲げている。この“街”は、どのような人が住み、どういうモノを求めているのか、そこをしっかり観察してテナントのリーシングや販促活動などを行っている。

―― 商圏内は競争も激しくなっています。
 栗原 当館の商圏は、直近でイオンモールが2件(上尾、川口)開業したほか、既存SCでは、ららぽーとやアリオが点在する。隣接する大宮、浦和の駅前商業も含め、国内でも有数の商業激戦区エリアだと思っている。だが、そこの競合環境はあまり意識しすぎず、こうした競合環境の中でもわざわざコクーンシティを選んで来ていただいているお客様、出店いただいているテナントに応えられる施設づくりを目指している。

―― 住宅、オフィス整備など周辺が変わる中で、担う役割は。
 栗原 コクーンシティが目指すのは、単なるSC機能だけではなく、街づくりだと思っている。街には、色々な目的があり、遊びに来る人、働きに来る人、住む人もいる。最近、大型マンションやオフィスなどができ、様々な変化があって新しい機能が街に備わってくるのはウエルカムだ。当館もこうした街の変化や成長に合わせて、商業の部分を提供していかなければならないし、今はまだない機能に関しても住民や来街者のニーズに合わせて、整備していかなければいけないと思う。

―― 今後の街づくりについて。
 栗原 コクーンシティの街づくりは段階開発であり、街の変化やニーズに合わせて、求められる機能をタイムリーに提供していくことを目指している。また、さいたま新都心のエリア全体として賑わい、安心安全などの魅力づくりを常に意識している。これを深化させるため、3月にエリアマネジメント組織も立ち上げた。そして、常に街全体を見た街づくりを意識し、そのコミュニティコアとしてショッピングや飲食、イベントなどを楽しんでもらう施設としてコクーンシティを位置づけており、街の発展に貢献していきたい。


(聞き手・副編集長 若山智令)
※商業施設新聞2404号(2021年7月20日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.353

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