(株)ニュー・クイック(東京都中央区)は、駅ビルなどで精肉専門店「ニュー・クイック」を展開しており、5月には「ららテラス川口店」がオープンする。最近ではオリジナルキャラクター「クイッピー」が人気で、商業施設のイベントにもたびたび登場。身近な精肉店という認知の拡大に寄与している。新規出店を継続するほか、秋には新しくカツサンド専門店を立ち上げるという。代表取締役の林浩二氏に聞いた。
―― 店舗展開や出店予定から教えてください。
林 関東圏を中心に約90店を展開しており、その大半が駅ビル内など駅の近くに立地している。共働きの家庭が増えているため、奥様のみならずご主人が会社帰りに惣菜を買って帰られるような光景も増えてきている。
最近では2月に「二子玉川東急フードショー店」をオープンしたほか、5月に開業するららテラス川口にも出店する予定だ。ほかにもいくつか出店が決まっており、今後も関東圏を中心に可能な限り展開していきたい。
―― ほとんどの店舗で対面販売を実施しています。
林 従業員と会話をしながらどんなお肉を買うか決められる対面販売というのは、お客様にとって買いやすいのではないか。「何人でこんな風に調理して食べたい」とおっしゃっていただければそれに見合ったお肉と量を提案することが可能だ。グラム単位だけでなく、「5枚」「10枚」など枚数単位での購入もできる。そういう意味では非常に敷居が低い販売スタイルだと思うのだが、スーパーでパック詰めのお肉を買うのに慣れている、40代以下の世代の方にはハードルが高く感じられるようだ。
そこで、2年ほど前から気軽に買い物ができるような接客スタイルに注力している。こちらからお客様にお声がけする接客スタイルを取り入れるようにした。時には従業員が売り場に足を延ばしてお客様とお話ししやすいよう並んで会話をすることもある。
―― 店舗や商業施設で実施するイベントについて。
林 各店舗での販促や商業施設のイベントでは、当社のオリジナルキャラクター・クイッピーの着ぐるみが稼働している。クイッピーは女性従業員が描いたイラストを基にデザインしたひよこのキャラクターで、23年の夏に公募によって名前が決まった。最近では「田無アスタ専門店街」で開催された30周年祭イベントで、他の色々なキャラクターと一緒にクイッピーも登壇した。
こうしたイベントへの積極的な参加は、ニュー・クイックをもっと知ってもらうための取り組みの一環だ。多くの方にとって我々は「駅ビルのお肉屋さん」というイメージで、ニュー・クイックという名前は中々浸透していない。クイッピーの着ぐるみと触れ合ったことをきっかけに名前を覚えていただき、「駅前のニュー・クイックでお肉を買ってきて」と言ってもらえるようになりたい。そうすることで来店頻度の向上も期待できるだろう。
―― イベントに対するデベロッパーの反応は。
林 最近ではむしろデベロッパー側から「施設のイベントにクイッピーを出演させてほしい」という要請がある。また、ニュー・クイックとしてのイベントを開催する際にも非常に多くの協力をいただいており、デベロッパー各社とは良い関係を築けていると思う。
―― 今後の展開について。新しい取り組みなどの計画はありますか。
林 牛カツを使ったカツサンドの専門店を出す計画が動いている。牛肉をシャトーブリアン、サーロイン、ランプなどの部位ごとに分けて、バックヤードで揚げたでき立てを使用したカツサンドを販売する予定だ。まずは9月ごろにも催事で出店したいと思っており、好評であれば常設店も検討したい。
肉屋だからこそ実現できる、本格的なカツサンドに仕上げたい。それなりの価格を見込んでいるため、出張の帰りにご褒美で買って帰ったり、ちょっとしたおもたせとして誰かに渡したりするような、ご褒美需要を狙っていく。
―― 既存の業態についてはどうですか。
林 既存のお客様の満足度をより高めるため、既存店の改装にも投資を振り向ける必要があると考えている。これまではデベロッパー主導だった改装を自分たちのタイミングで実施し、お客様が買いやすく、従業員が働きやすい店舗へと生まれ変わらせていく。具体的には、対面ケースをお客様が買いやすい長さに変えたり、ショーケースの一部を冷凍用に変更したりすることを検討中だ。
冷凍食品は餃子や肉まんなど非常に美味しい商品が揃っていると自負しており、需要も高まっている。ただ、これまでは店舗にスペースがなく乱雑に配置していたため、お客様から見て買いづらい状況だった。それをきちんとスペースを取ることで買いやすい配置を整えたい。
(聞き手・安田遥香記者)
商業施設新聞2592号(2025年4月15日)(5面)
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