商業施設新聞
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第477回

(株)TSTエンタテイメント 代表取締役社長 都甲義教氏


東急歌舞伎町タワー、劇場、ホテルなど各機能が好調
全館ジャックで“好きを極める”

2025/4/15

(株)TSTエンタテイメント 代表取締役社長 都甲義教氏
 「東急歌舞伎町タワー」が4月に開業2周年を迎える。ホテルや、映画館、ライブホール、ナイトクラブなどのエンターテインメント施設を集積した超高層複合施設で、そのコンセプトは“好きを極める”。各施設は堅調に推移し、アーティストやアニメ作品などによる全館ジャック企画といった、ファンが好きなものを様々な角度から楽しみ尽くすことができる独自の取り組みも多い。東急歌舞伎町タワーの管理・運営を行う(株)TSTエンタテイメント代表取締役社長である都甲義教氏に施設の動向を聞いた。

―― 直近の状況を。
 「東急歌舞伎町タワー」
「東急歌舞伎町タワー」
 都甲 今年の2月最終週に来館者数が累計1000万人を突破した。目的性を持って訪れる方が多く、劇場の「THEATER MILANO-Za」は2年先のスケジュールまで埋まり、ライブホールの「Zepp Shinjuku(TOKYO)」も25年のスケジュールはほぼ埋まっている。ホテルの稼働率も高く、総じて「Kobe Beef Dining 和牛特区」などインバウンドを取り込めている店舗は堅調な傾向だ。

―― 改めてこの規模でオフィスや住宅がないことに驚かされます。
 都甲 超高層の複合ビルで賃料基盤となるオフィスや住宅がないのはかなり珍しいと思う。この施設はチャレンジングな試みが多く、地下には東急グループ直営のナイトクラブがあり、映画館は全席プレミアムシートになっている。

―― 面積はホテルが特に大きいです。状況は。
 都甲 非常に好調に推移している。ホテルはラグジュアリーブランドの「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」と、ライフスタイルホテルの「HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel」を展開し、実はBELLUSTAR TOKYOは開業当初、稼働率が高くない時期もあった。だからといって簡単にADRを下げることなく焦らずに時間をかけてオペレーションやブランディングにも力を入れた結果、徐々に稼働率とともにADRも上がり始めて、いまは12万~13万円程度になっている。稼働率は2ブランド平均で8割程度と高く、宿泊者の約9割がインバウンドだ。

―― 2階のフードホールは館の顔ですね。
 都甲 まさに顔。「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」として10店が集積し、日本各地の食を楽しめる。夕方から夜にかけてはインバウンドも多く、特徴的なのは店舗中央のステージ。ミニコンサートやカラオケ大会など連日イベントを実施しているが、ステージは意思を持って我々が管理する共用部にした。館内には目的性が高いテナントが多いので、各テナントがPRしてもらえば来館者は来るのかもしれないが、それだけでなく各機能の連携・回遊を進めたい。そのため我々も集客に取り組み、回遊施策に取り組んでいる。

―― 確かにこちらの用途間連携は大がかりです。
 都甲 タワーのコンセプトが“好きを極める”なのだが、IPコンテンツやアイドルグループとコラボして、ライブホールでコンサート、飲食店でコラボメニューを提供、さらにホテルではコラボルームも用意し、屋外の大型ビジョンも活用するなど、全館をジャックして色々な角度で『好き』を楽しみ尽くせる。ここまで館一体でコラボできる施設はないのではないか。

―― 映画館はいかがですか。チャレンジングな価格設定ですが。
 都甲 価格が4500円と6500円(いずれも一般料金)なので高く見えるが、一回使っていただくと良さがわかり、リピート率が高い。20~30代の男性が多い傾向にあり、年間6本以上映画をご覧になる映画好きの方によく利用されている。音響は坂本龍一さんに監修していただいた高品質なもので、アーティストのライブ上映では『まるで実際に会場にいるかのような体験ができる』との声をいただくほど。値段に関しても4500円の「CLASS A」はポップコーンとソフトドリンクが飲み放題・食べ放題でラウンジも利用できる。6500円の「CLASS S」ではこれらに加えて鑑賞後にプレミアムラウンジで余韻に浸れる。このプレミアムラウンジには上質なインテリアがあり、ウェルカムドリンクも提供している。一味違うシネコンなので、坂本龍一さんに関連する作品など何かストーリーがあるものを上映すると特に反応がよい。

―― 東急グループといえば渋谷です。ここで得たノウハウの横展開は。
 都甲 様々なものを横展開していきたい。この施設は所管が文化・エンターテインメント事業部で、渋谷の街おこしイベントなども手がける部署。当館前でストリートライブやダンスバトルを運営するなど、エンターテインメントを切り口に様々なイベントをしているのだが、こうした取り組みは渋谷に逆輸入している。

―― 今後の取り組みや方向性について。
 都甲 全館で一体感ある取り組みを進めて、あのタワーだと何か面白いこと、面白い発信ができると思ってもらえる施設になりたい。もう一つは東急歌舞伎町タワーを通じて、この街を安心して楽しめる場にしたい。アンケートも取ったのだが、歌舞伎町という街に対して少し危ないイメージを持たれる人もいる。そうした中で、地下のナイトクラブは東急グループの直営で展開したり、タワー前の広場では、我々がダンスバトルを手がけたりしている。K-POPのフェスではベビーカーを押して来館する人もいるなど家族連れの姿も見られ、少しずつ成果が出てきたと感じている。歌舞伎町の中で安心安全に過ごせる場にしていきたい。


(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2591号(2025年4月8日)(2面)

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