商業施設新聞
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No.815

私の知らない京都


岡田光

2021/7/20

 京都で生活して40年余り。盆地のため夏は暑く、冬は底冷えする地域であるが、「住めば都」の言葉どおり、居心地の良さは抜群だ。職場のある大阪へのアクセスの良さはもちろんのこと、電車1本で、新幹線が乗り入れる京都駅や、繁華街の河原町エリアに行ける。加えて、取材で出張する機会の多い私にとっては、名古屋駅まで1時間かからないのはスケジュールを立てる上でも、非常に助かっている。東京駅も2時間半で行けるこのアクセスの良さは、仕事に限らず、プライベートでも旅行するのに便利だ。

 様変わりしているとはいえ、商業環境もおおむね良好と言える。近年は新規ホテルの開発や、高級ホテルが開業する話題ばかりが先行しているが、繁華街となる河原町エリアでは、「京都マルイ」の閉店後もエディオンが大型店をオープン。京都駅ではJR西日本グループが「京都駅前地下街ポルタ」の改装を実施し、「きょうこのみ」と「ポルタキッチン」をリニューアルオープンした。こうした中心部の動きに同調するかの如く、イオングループが既存施設を相次いで改装。郊外に立地する「イオンモール京都桂川」や「イオンタウン久御山」が今春にリニューアルオープンし、「イオン伏見店」は建て替えの真っ最中である。今後は城陽市に開業する予定のアウトレットモール「(仮称)京都城陽プレミアム・アウトレット」に期待が集まる。

旅の記録を記した「手のひら一筆箋」
旅の記録を記した「手のひら一筆箋」
 慌ただしい動きを見せる大型商業施設とは対照的に、スーパーマーケットやドラッグストアなどの量販店は落ち着きを取り戻している。新型コロナウイルスの感染拡大で内食需要が高まり、「これは勢力図が塗り替わるか?」と予想したが、蓋を開けてみると、スーパーマーケットはコスモコーポレーション(新鮮激安市場!)、ハートフレンド(フレスコ)、さとうグループ(フレッシュバザール)などの地元企業が奮闘。ドラッグストアも、コスモス薬品の出店が増えるかと思いきや、京都府内における大店法の届け出はここ1~2年でゼロという結果になり、他の都府県に比べて勢いがない。やはり、ウエルシアホールディングスの一員となった、地元企業のシミズ薬品が健闘しているのだろう。

 40年も住めば、京都のことは何でも知っていると、周囲は思うかもしれない。しかし私も知らないことはいっぱいある。例えば、京都市内の飲食店について。取材も含め、延べ200軒程度の飲食店を訪れた私でも、知らない店舗は多い。先日、マリオット系のホテルの内覧会に参加した際、「チャプターファクトリー」という空間に目を奪われた。このチャプターファクトリーには、京都を知り尽くした人々の旅の記録を記した「手のひら一筆箋」が用意されていたが、手に取ってみると、じっくり読みたくなるものばかり。例えば、喫茶「チロル」のカレーライスは、具材が溶け込み、奥深い味わいのルウがたっぷりかかった、昔から食べ慣れたザ・カレーライスとして親しまれている。このような話を耳にすると、自分の目で確かめたくてウズウズしてしまう。知らないことを見て、聞いて、楽しむ(味わう)ことは、私の人生の糧である。将来そう語れるように、知ったかぶりをせず、謙虚な姿勢で仕事に取り組み、人生を歩んでいきたい。
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