商業施設新聞
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No.798

変わる亀戸の面白さ


高橋直也

2021/3/16

 商業記者として、進化を遂げようとしている街に住むのは実に面白い。いま野村不動産(株)が亀戸駅前で大規模な複合開発を進めている。商業施設「サンストリート亀戸」(東京都江東区亀戸)の跡地にSC、住宅、小学校などで構成する大規模複合開発だ。商業施設は地下1階地上6階建て延べ約5万8000m²、住宅は934戸を計画しており、完成すれば大いに周辺はにぎわうだろう。この開発が自宅の近所も近所。毎日のように工事現場を通りかかるし、そもそも自宅のベランダから工事が見える。工事は少しずつだが進んでおり、建屋の高さも出てきて、どこまで大きくなるのかワクワクする。

 注目したいのは亀戸エリア内における力関係の変化だ。野村不動産が開発している場所は、亀戸駅東口前だが、亀戸駅には北口もあり、北口にはアトレがある。さらに周辺は店舗が立ち並び、バスロータリーもある。つまり、北口は現時点では「賑わっている方の出口」なのだ。野村不動産が開発するエリアは住宅や小さい飲食店などが広がるエリアで、旧サンストリート亀戸があった際は一定の賑わいがあったが、閉店後は用事がなければ足を運ぶ人は多くない。知る人ぞ知る飲食店もあり、味わい深いエリアなのだが、通行人数では東口エリアは「賑わってない方」になる。さて、これが野村不動産の大規模開発によってどう変わるか。

 すでにアトレは先手を打っており、2020年12月に地下の食料品フロアを大改装した。この改装はただの店舗の入れ替えでなく、フルリニューアルと言えるもの。専門店を追加しただけでなく、導線も一新。さらにレジの位置、棚の位置など整理して、店内を広く見渡せるようになった。改装後、初めて足を運んだ時はあまりにもフロアが広く見えて驚いたものだ。フロアを見渡せるようになったため、訪れるたびについつい歩きまわって、予定になかったものも買ってしまう。

野村不動産による大規模複合開発のイメージ
野村不動産による大規模複合開発のイメージ
 この改装は、長い間リニューアルをしていなかったことや、空き区画があったことも要因と思われるが、野村不動産の開発をまったく意識していないということはないだろう。上質、ワクワクする食品売り場などアトレらしさが強まっており、「アトレを選んでもらう」という開発担当者の意志を感じる。一方で、野村不動産はどう出るか。食料品で言えば質はもちろん、面や規模で勝負してくるはずだ。アトレの食料品フロアは広く感じるようになったが、やはり駅ビルということで、ワンフロアの面積に制約はある。しかし地下1階地上6階建て延べ約5万8000m²、店舗面積約2万8000m²のSCにはワンフロアで様々な表現、売り場づくりができる。広さを生かした品揃えで集客を図ってくるはずだ。

 野村不動産の複合開発は22年夏にオープンする予定だ。開業すれば周辺も賑わっていくはずで、東口エリア自体の活性化もあり得る。亀戸の住民として野村不動産に期待したいのは、周囲と連携した街づくりだ。東口が「野村不動産の施設頼み」ではエリアの活性化に限界がある。北口地区にはアトレだけでなく、無数の店舗が並ぶからだ。東口もエリアとして一層の賑わいをつくるためには単一の施設という「点」ではなく、周囲の店舗、緑道などの資産をうまく活用した「面」で勝負し、歩くのが楽しいエリア、訪れる意味があるエリアにしてほしい。
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