商業施設新聞
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No.797

NO MASK NO LIFE


松本顕介

2021/3/9

マスクは完全に日常生活の市民権を得た
マスクは完全に日常生活の市民権を得た
 季節に関係なく毎日マスクをするようになって1年が経った。言うまでもなく新型コロナウイルスの感染防止のためだ。感染収束が長期化する見通しとなった際には「季節に関係なく、いつもマスクをつける」というこれまでの日常とは異なる生活スタイルについて「ニューノーマル」または「新常態」などと呼ばれていたが、もはやニューノーマルではなく、日常となった。この1年、マスクをしない日は無い。急いで家を出てうっかりマスクを忘れることのないように、つねに予備を携帯することも怠らない。不織布、手作り布タイプ、ウレタンタイプがあり、TPOによって使い分けている。

 市場には医療用高機能マスク「N95」と呼ばれるものから、おしゃれマスクなど、多彩な商品が発売されており街を彩る。また耳が痛くならないものや、立体構造など様々なものが市場に出回っている。テレビドラマでも場面の中でマスクを着用しているシーンも増えているし、米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルス予防策として米国民にマスク着用を促すため、過去の人気アクション映画などに出演した俳優にCGでマスクを装着させる工夫を凝らした場面を盛り込んだ新たな広報ビデオを公開した。『ハリーポッター』『オースティン・パワーズ』『マトリックス』『マッドマックス』『ジョーカー』などは映画ファンにはたまらない。

 取材中はもちろん、テレワークやリモート会見でもついしてしまう。外すのを忘れてしまい、体の一部とまでは言わないが、衣服の一部と言えるだろう。今やマスクをしていないと不安すらある。ある時、取材で「私はPCR検査を受けて陰性だったので外しても良いか」と言われ、「あなたもどうぞ」と促され、久しぶりにマスク無しインタビューをしたが、何か心許ないことこのうえない。「夏でもマスクかよ」と思った昨年に懐かしさすら感じる。「NO LIFE NO MASK」である。

 先日、日本でも医療従事者からワクチン接種が始まった。このあと高齢者、一般人へと接種が広がり、集団免疫を獲得して、やがてコロナ禍が収束し、人々が徐々にマスクを外していく。その時、マスクをしないことが一時“ニューノーマル”となり、最初はおっかなびっくりでマスクを外すかもしれない。でも人混みではマスクを外すことに抵抗を感じたり、もしかすると恥ずかしいなどという感情も生まれているかもしれない。そんなことをしているうちに、やがてマスクなしが日常、つまり以前に戻るわけで、来年あたりにはこのコラムで2020年ごろのマスクにまつわるエピソードを笑っているかもしれない。
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