商業施設新聞
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No.795

所有と共有


岡田光

2021/2/22

 今年43歳を迎える昭和生まれの私にとって、モノを持つ=所有する願望は常にある。自家用車を買ったり、住宅を購入したりする機会は少ないが、時計を買ったり、衣服を購入したりする機会は多い。学生時代はお金を使っている実感があまりわかなかったが、社会人になって給料をもらうようになると、自分が働いて稼いだお金でモノが買えるという喜びを味わえるようになった。今では家庭を持ち、その喜びは妻のモノや、2歳になる息子のモノへと心境は変化していったが、所有する願望は依然として強い。

心斎橋PARCO内に設けたシェアオフィス「SkiiMa」
心斎橋PARCO内に設けたシェアオフィス「SkiiMa」
 しかし、近年は自分で所有するよりも、共有することを楽しむ人が増えたように感じる。カーシェアリングや古着はその良い例だ。私は自家用車にこだわりを持つが、私の下の世代は車を持つことに執着せず、カーシェアリングを活用し、他人が使った車でも平気に乗って、ドライブを楽しんでいる。古着も同様で、他人が着用した衣服を着こなし、お洒落な装いを表現している。私はTwitter、Facebook、InstagramといったSNSをやらないので、その心情は理解できないが、自分の体験したことをWEB上に公開し、友人や知人から「いいね」をもらって喜ぶ人もいるという。

 商業施設でもこの共有という概念を取り込む動きは活発だ。例えばキッズスペース。これまではテーブルやイス、ベンチのみを備えていた共用部に、遊具を置き、絵本を並べ、親子が楽しめる空間を作り上げた。これにより、育児に忙しく、短時間で買い物を済ませなければならない子育てママに憩いの場を提供し、商業施設に滞在する時間を伸ばすことに成功した。
 また、テナントにも共有の概念を取り込む動きが見られる。代表的なのが、ゲオホールディングスが展開する「セカンドストリート」。古着の買い取りおよび販売などを行う同業態は、これまでは郊外の路面店を中心に展開してきたが、最近は「ルビットパーク」「イオンタウン」「フレスポ」といった複合商業施設に出店する機会が増えている。
 そして、2020年11月に開業した心斎橋PARCOでは、シェアオフィスの1号店となる「SkiiMa(スキーマ)」が誕生した。このスキーマは、商業施設というヒトやモノが行き交う刺激溢れる空間の中で、好きなことを磨き、仲間とともに好きを形にできる場所を目指すワーキングスペースである。働く場所を共有することで、コミュニケーションの広がりを促進するとともに、新たなビジネス機会の創出も狙っている。

 こうした共有の流れに水を差しているのが新型コロナウイルスである。SNSはともかくとして、レンタカーや古着を使い、キッズスペースやシェアオフィスを利用することは、新型コロナウイルスに感染することにつながると感じる人もいるかもしれない。そうなると、共有という概念の影響が弱まり、再びモノを持つことに喜びを感じる人が増える可能性もある。
 現代は消費の主役がモノからコトへと移行し、最近はトキ消費、イミ消費、エモ消費という新たな言葉も生まれている。しかし、お金を使って何かを購入するという消費の仕組みはいつの時代も不変だ。新型コロナウイルスの収束が見通せない中で、今の消費の主役である20~30代の世代は、どのような消費行動を生み出すのか。昭和生まれの私も、その動きには注目している。
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