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「IT用への有機EL浸透度」が左右


~21年のFPD装置市場と次世代技術~

2021/2/12

 新型コロナに伴うディスプレー需要の増加で、2020年のFPD市場は金額ベースで前年比13%も伸びた。21年に入ってからも好調を維持し、液晶パネルの価格もまだ上昇が続いている。これを受けてFPDメーカーの21年上期の業績は記録的な利益率になる可能性が高く、21年のFPD市場も20年と同程度伸びると予想している。

 ただし、不安要素もある。その1つが部材の律速だ。20年秋以降、ガラス基板メーカーの工場でトラブルが相次いで発生した。今のところガラス価格に顕著な上昇は見られないが、4~6月期以降に影響が出てくる可能性がある。また、ドライバーICは慢性的に不足しており、タイト感や不安感が過剰発注につながらないか危惧される。

 FPD需要の増加を反映して、当社では21~25年のFPD製造装置需要の見通しを先ごろ若干上方修正した。TCL CSOTが新たにG8.6の液晶ライン「T9」を整備する可能性が高まったことが寄与する。ただし、21年は前年比で市場が縮小しそうだ。生産がタイトなため少額のボトルネック改善投資を行うFPDメーカーは少なくないものの、韓国で大型投資が実施されるか、まだ流動的だ。

 今後のFPD製造装置市場は「IT用パネルのどこまで有機ELが浸透するか」が大きく左右するとみている。

 その理由の1つがアップルだ。アップルはiPadとMacbookのロードマップに有機ELの採用を検討しており、早ければ22~23年に搭載すると推定されている。もう1つがサムスンディスプレー(SDC)の生産戦略。予定どおりG7液晶工場「L7」の残りを3~4月に閉鎖すれば、22年にはここにG6有機ELラインの設置が見込まれる。だが、IT向けの需要がさらに増えるようなら、SDCに限らず他社も含め、G8.5へのスケールアップと新工場の整備を本格的に検討するだろう。

 有機ELの蒸着工程がG6ハーフからG8.5ハーフに大型化すると、ガラス基板の面積は2倍になる。これで生産性が高まり、IT用パネルをより効率的にとれるが、課題も多々ある。

 装置のサイズはさらに大型化し、コストも当然高くなる。基板は現在の水平搬送のままか、それともフットプリントを小さくするため新たに縦型搬送を採用するのか。IT用の有機ELパネルは発光層の積層数を増やす可能性があり、プロセスステップが増えるかもしれない。また、装置を開発したとして、いったい何社のFPDメーカーが購入してくれるのか。

 バックプレーンの酸化物TFTは十分な性能を発揮できるか、イオン注入プロセスやファインメタルマスクは大型化に対応可能か、などクリアすべきテーマは数多い。

 FPDメーカーは中国勢を含めてG8.5への大型化を検討し、装置メーカーも検討は継続している。ただし、現時点ではリスクが高く、技術的に不可能ではないが、結論はまだ見えていない。

 また、ミニ/マイクロLED技術の行方も注視している。中国のTCLに続いて、21年はサムスンもLGも液晶テレビのバックライトにミニLEDを採用する予定だ。ただし、これらはすべてプリント基板にLEDを実装したパッシブマトリクス駆動方式。マイクロLEDを含め、ディスプレー技術として発展させていくためには、アクティブマトリクス駆動技術を実用化していくと、性能をよりアップできるのではと期待している。

 サムスンは今年からマイクロLEDテレビの販売も開始するが、現在のマイクロLEDディスプレーは液晶や有機ELのような「FPDメーカーによる一貫生産」ではない。LEDや基板の製造からLEDの実装・検査を経るためサプライチェーンが長く複雑で、チップ数が増えるほどコストやばらつきの問題が出やすい。まだ「手作り感」が強く、量産モデルの確立をしばらく待つ必要がある。LED技術を応用するサムスンのQNEDもパイロットラインの計画が固まっていない。

 装置需要につながる投資案件として、21年はSDCのQD-OLED追加投資とA4ライン拡張、LGディスプレーのモバイル用有機ELへの追加投資などが注目ポイントになる。



OMDIA チャールズ・アニス、お問い合わせは(E-Mail: CHARLES.ANNIS@omdia.com)まで。
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