イオンモール(株)(千葉市美浜区中瀬1-5-1、Tel.043-212-6450)は、国内外でショッピングモールを約170モール展開し、人々の生活に欠かせない商業施設のポジションを確立している。2020年度(21年2月期)から新中期経営計画がスタートし、営業収益3900億円を目指すとともに、新たな取り組みに挑戦し、リアルモールの価値最大化を図る。新型コロナウイルスが拡大し、ニューノーマルな施設運営が求められる中、イオンモールはどう対応するのか。同社代表取締役社長の岩村康次氏に話を聞いた。
―― 足元の状況は。
岩村 新型コロナの第1波があり、その後リベンジ消費とも言うべき消費の増加を経て第2波が訪れ、8月は苦戦を強いられた。夏休みの期間が例年より短かったというのも影響したが、この辺りを考慮すれば、ほぼ思ったとおりに推移したと言える。一方、9月に入ってから消費は徐々に回復傾向にある。
だが、客数は残念ながら戻りきっていない。地域にもよるが、全体の10%程度は「今は外出をしたくない」と考える人がいることも確かで、この層が戻ってこないため、結果的に客数や売り上げ減に影響を与えている。
―― アフターコロナをどう見るか。
岩村 正直、第1波が収束する前に第2波が来たので、どう見るかは非常に難しい。ただ、今の傾向としては、ワクチンができない限りコロナを恐れながら、注意しながら生活しなければならないので、客数がコロナ前の状態に戻るには時間がかかると思う。また、20年内に売上高を昨年対比で5%減程度まで持っていければと思っていて、とにかく我々はテナント支援という形で様々な施策に取り組んでいる。
―― 新中期経営計画がスタート。コロナの影響は。
岩村 20~22年度の3カ年を対象とする。新中期経営計画トータルで見れば、コロナの影響は大きく、数字は厳しいものだろう。ただし、当初計画の22年度単年度の数字はクリアしたい。そこに至るまで当然落ち込みはあるし、そこからもう一回這い上がっていかなければならないが、当初計画の営業収益3900億円という着地点を目指す。20年度はともかく、21年度が19年度水準まで戻って、そこから22年度に向けて伸ばしていく。
―― 新モール開設は。
岩村 直近では、12月に「上尾」、21年春に「新利府南館」がオープンを控えている。また、21年秋にはオフィス複合型の「(仮称)ノリタケの森プロジェクト」が開業予定だ。このモールは、これから働き方が変わっていくだろうという考えのもと開発したもので、保育所の導入、仕事帰りに買い物が済ませられるなどの環境整備を行い、働き方の多様性に応えられると思っている。
22年度には、地域創生型商業施設ジ アウトレットを北九州に開業する。立地的に分かりやすく、高速や鉄道からの視認性も高い。既存の「ジ アウトレット広島」とマーケットが重ならないので本州からも集客できると考えればかなり期待が持てる。ジ アウトレット広島と同規模ほどでオープンし、その後は計画的な増床も考えている。他のアウトレットとは異なった、独特な取り組みも行っていきたい。
―― オフィス複合はこれから進めていくか。
岩村 オフィス複合だけを進めるのではなく、出店エリアにおいて、例えばニーズとしてホテルや住宅があれば、それらの複合の場合もあるかもしれない。
その根本は、企業理念である「ライフデザインデベロッパー」をもう一度考え、暮らしに寄り添うということに基づく。現状、我々は自らで事業領域を狭くし、勝手に商業専業デベロッパーと思っているのではないか。それをいったん元に戻し、ニーズや社会課題の解決につながるならやるべきだと思っている。
―― 新規開発の余地は
岩村 いわゆる「カニバル」ようなモールはなくなる。今計画しているものは、まだ我々が取れていないマーケットに進出するものだ。増床もだいぶ進み、地域ナンバーワン戦略をもって価値提供のために増床するモールは、残り10~15%残っているくらいだろう。
―― 海外について。
岩村 重要視しているのは中国とASEANで、ASEANは特にベトナムに投資を集中する。ベトナムは23年に人口1億人を超え、30年には90%が中間所得層になると言われている。当社の持つ価値を提供し、ニーズに応えられるベトナムが最も適していると思う。もちろん他の国も成長に合わせて出ていく。だがそれには小さなマーケットにも対応できるフォーマットづくり・モデルも必要だ。中国は、北京・天津・山東省、江蘇・浙江省、湖北省、広東省の4エリアで展開しており、今後もこれからもこのエリアを中心に展開していく。
―― 今後について。
岩村 当社としては、20年内にこれまでの体質を変え、新しいことに対してニーズはどうかを分析し見極め、21年にそれらを様々な形で実行しながら、22年を迎え勝負し、25年へ進んでいきたい。
いわゆる“アフターコロナモール”が誕生するのは23年くらいだろう。そのころには新しい形のモールができ、ソフトの面での新たな取り組みやハードの面で大きく変わったことの組み合わせができれば、25年が見えてくる。また、アフターコロナとして設計したモールに入れていく血や魂がどれくらい既存店の中で作り出せていけるかというものも大きい。
(聞き手・編集長 松本顕介/若山智令記者)
※商業施設新聞2369号(2020年11月3日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.344