新型コロナウイルス感染症を警戒しながらも、「経済を止めるな」を合言葉に、企業や自治体が消費経済を活溌化させる努力を続けているのを実感する秋である。バンダイナムコはぬいぐるみギフト専門店、CAセガジョイポリスはゴジラミュージアム、富山県は新幹線で海の幸を高速輸送し、消費を喚起しながら、コロナ禍の人の心を少しでも明るくしたいとの商品開発に余念がない。取材の機会があったので紹介したい。
「ハムリーズ 横浜ワールドポーターズ店」内の「Fuzzbuzz by Hamleys」
(株)バンダイナムコアミューズメントは、贈り物におすすめの、日本最大級のぬいぐるみギフト専門店「Fuzzbuzz by Hamleys」を、9月18日に横浜市の「ハムリーズ 横浜ワールドポーターズ店」に、10月2日には福岡市の「ハムリーズ キャナルシティ博多店」内にオープンした。横浜の店へ取材に招かれたので行ってみると、担当者は「『Fuzzbuzz by Hamleys』は、1000種類を超えるぬいぐるみを品揃えし、柔らかな綿毛状の(Fuzzy)ぬいぐるみを贈るとき、贈られたとき、そして手にしたときの暖かく、優しく、楽しい気持ちが、たくさんの人に伝わる(Buzz)お手伝いをする店」と説明する。コロナ禍で不安やストレスが蔓延する中、人々に感謝や愛情の気持ちを伝えるギフトにもぬくもりや癒しが求められている点に着目し、ぬいぐるみのプレゼントを流行らせようと企図したものだ。花のぬいぐるみなど多くの種類があり、おじさん記者(筆者)も楽しくなる。このプレゼントが流行すれば、コロナ禍の世相が少しはやわらぐのではないかと共感した。
またCAセガジョイポリスは、東京・台場の屋内型テーマパーク「東京ジョイポリス」に、10月1日から2021年5月31日までの期間限定で、NTTドコモと東宝が共同製作したオリジナルXRコンテンツ「トーキョーゴジラミュージアム」を登場させている。この「トーキョーゴジラミュージアム」は、映画『シン・ゴジラ』の制作スタッフにより、1/150スケールで再現されたリアルな「ゴジラに破壊された東京のジオラマ」が、「Magic Leap 1」(米Magic Leap社の軽量なウェアラブルヘッドセット)を通して見ることで、ゴジラ襲来前の美しい街並みに復元されていく。XR(VR=仮想現実、AR=拡張現実、MR=複合現実)技術を駆使して再生された街中にゴジラが出現し、鑑賞者は大迫力のバトルと予想外の結末を目撃することになる内容だ。取材に行ってみると、担当者は「コロナ禍に、来場してくださるお客様に少しでも楽しんでいただけるコンテンツを増やしたかった」と熱く語った。コンテンツは、10分程度で終わってしまい、短くて残念な気がしたが、ヘッドマウントディスプレイを装着するため、子供の目への影響は軽減されるのかもしれないと感じた。精密に制作されたジオラマと、迫力画像の技術には、コロナ禍のジョイポリスの愛好家もきっと満足するに違いないと確信できる内容だった。料金は500~1000円。
さらに富山県は、西日本旅客鉄道、東日本旅客鉄道、鉄道会館の3社と協力し、東京駅の飲食店などで「富山湾の秋の味覚」フェア(レストランフェア)を10月1~31日に開催した。「きときと」(富山の方言で「新鮮」)で、美味しい海の幸を東京の人に味わってもらうため、北陸新幹線を使って鮮魚を高速輸送し、鮮度抜群な食材を届けた。富山湾の宝石と呼ばれる「白エビ」を中心に、魅力的な食材・メニューが用意された。私は、東京駅構内のキッチンストリートにある「ビモン」を訪れ、白エビのアヒージョ(1200円)を食した。富山県産白エビ、キノコ、トマトをイタリア北部ベローナ産の高級オリーブオイル「サルヴァーニョ」でアヒージョに仕上げ、白エビの繊細な味わいとオリーブオイルの調和を楽しめる逸品。同フェアから半年ほど遡った3月には富山県知事も東京駅へ現れ、「コロナ禍に負けない、元気な富山の味覚をぜひ東京駅で味わってほしい」と挨拶していたのを思い出した。私は、アヒージョのおいしさに、口を白エビ型に曲げてニンマリしてしまった。
ぬいぐるみ、ゴジラミュージアム、富山の白エビ、仮想と現実の違いはあるが、どれも生き物をかたどって商品化したもので、消費を活発化する事業者努力の賜物だ。1~10月には600社超のコロナ関連倒産があったそうだが、秋にはそれぞれの企画で消費を喚起してコロナを吹き飛ばそう。