商業施設新聞
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No.774

居酒屋需要は不滅


山田高裕

2020/9/23

 現状のコロナ禍で、最も影響を受けている業種の一つが飲食業、特に居酒屋だ。かつて大幅な成長の波に乗っていた鳥貴族は、2020年7月期の決算で売上高が前期比23%減となり、8月の客数も前年の6割程度となっている。大手チェーンのコロワイドは、居酒屋を中心に196店の店舗閉鎖・再編を進めるなど、業界全体が大きなダメージを受けている状況だ。街の居酒屋も、4月ごろよりは客足が戻りつつあるものの、いまだに苦しい状況が続いている。

 こうした中、注目を集めている居酒屋を中心とした施設がある。7月28日に開業した渋谷の「MIYASHITA PARK」では、1階の路面部分にて日本各地の料理・酒を出す居酒屋19店を集めた「渋谷横丁」を開業した。このコロナ禍で、居酒屋を中心とした施設として当初は不安が持たれていたが、これが開業後、非常な盛況にあるという話を聞き、実際に足を運んでみた。

 到着してすぐ否応なしに目に入ってきたのは、路上にあふれる人の波だ。その人口密度はまるでお祭りの縁日街のようであり、おそらく近辺の路上では最も人口密度が高い空間だっただろう。店内の席はすべて埋まっており、軒先のテラス席もフル稼働状態、周りには席の空きを待っている人がたむろしている状況だった。

「渋谷横丁」に集まる人々
「渋谷横丁」に集まる人々
 筆者が訪れたのは金曜日の夜というゴールデンタイムで、通常の飲み屋街であれば仕事帰りのサラリーマンが非常に多い時間帯だ。しかし渋谷横丁に集まっていた人々はサラリーマンよりも、私服の若者や女性などがかなり多く、渋谷を拠点としている層がそのまま流れ込んでいるという印象を受けた。その意味では、まさしく渋谷の新しいランドマークとしてふさわしい空間となっているようだ。
 また客の中には、少なくない数の外国人も混ざっていた。人がこれだけ集まり、日本の食と酒が楽しめるこの空間は、日本居住の外国人にとっても絶好の交流スポットとなるようだ。コロナ禍で事実上外国人の入国が止まっている現状でもかなりの支持を集めていることから見て、コロナが落ち着き、インバウンド客が普段の姿を取り戻せば、インバウンドによる格好の「夜の街」消費スポットとしても注目が集まるだろう。

 ともあれ、「渋谷横丁」はこのコロナ禍の時代において、抑圧されていた消費とコミュニケーションの欲求を発散するのに絶好のスポットとなっているようだ。そして居酒屋や飲食業界に対してどれだけ自粛要請がされようとも、人々は「居酒屋」というものを根本的に必要としている。そのような事実を表している光景に見えた。
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