電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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激しさを増す米中ハイテク摩擦


~国防総省が対中レポート策定へ~

2020/9/18

 米中のハイテク摩擦は、半導体をめぐりさらに激しさを増している。

 米国は、CHIPS(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors) for America Act、そしてAFA(American Foundries Act)の2つの法案を提出し、国内で半導体製造を再び強化する方向へ動き始めた。

 かたや中国も、3兆円規模といわれる2回目の半導体産業育成ファンドを立ち上げる見込みで、14nm以下のプロセス開発を自国で強化するつもりだ。

 この2大大国は「半導体があらゆる産業の基盤であり、最も重要である」ことを強く認識し、この覇権を奪われると全産業にわたって痛手を被ると考え、開発を加速しようとしている。こうした開発バブルは、日本をはじめとした各国の装置や材料の重要ベンダーにとって一時的な追い風になるだろう。

 中国は、リーマン・ショック後の世界経済回復のリード役を担った。60兆円もの資金を道路や鉄道といった国内インフラ整備に投資した。そして今、100兆円にのぼる資金を「新型社会インフラ」の整備に投じ、米中摩擦の難局を乗り越えようとしている。この新型社会インフラとは5G、AI、インダストリアルIoT、EV充電設備、超高圧送電網などで、スマートシティを実現する基礎となる技術だ。

 本稿で以前にも述べたが、中国は減った外貨を再び稼ぐため、一帯一路を通じてスマートシティを海外へ移植し、経済圏を広げていく方針である。新型社会インフラの強化は、この具体化に向けた動きが政策に落とし込まれたものだといえる。ただし、自国の技術だけではすべてをまかなえないため、韓国や台湾、日本と良好な関係を維持し、技術の輸入を図る。

 一方で、米国は現在、これからの10年で中国をどう扱うかの基礎となるレポート「Get China Agenda」を取りまとめているようだ。国防総省が中心になって9月末までに取りまとめるといわれ、これは仮に政権が変わったとしても、政策として引き継がれていくものになる。中国を明確に敵国とみなし、どのようにして覇権を握らせないようにするかを徹底的に練り上げてくるだろう。

 これまではファーウェイを中心とした企業への圧力がメーンだったが、今後は金融面での締め付けを強化してきそうだ。ドル取引や海外ビジネスの禁止、米国証券市場への上場取り消しなどが考えられる。ただ、まずは全産業の基盤となる「半導体さえ抑えておけば中国を止めることができる」と考えて、プロセッサー、通信デバイス、イメージセンサーなどの国産化実現を阻もうとしている。

 かつての日米貿易摩擦が解消までに10年を要したことを考えると、米中摩擦も長期戦を覚悟する必要がある。もし、思いのほか短期で収束する可能性があるとすれば、それは「習近平体制の崩壊」だろう。実際、習氏の独裁色が強くなって以降、中国が政治や軍事の両面で世界制覇の野望を隠さなくなった。香港に次いで、将来は台湾でも一国二制度を崩す法案を導入するような措置に出れば、TSMCの存在があるだけに、米中の軍事衝突に発展する可能性すら考えられる。

 こうした米中の摩擦に伴う経済の分断に対し、企業は一定の決断をしなければならない。たとえば、アップルは、これまでフォックスコン一辺倒だった生産委託先を、一部だが中国のEMSに移し始めている。これは、中国ビジネスを今後も維持していきたいがための施策といえる。

 日本には半導体の製造装置や材料で優秀なメーカーが数多くあり、業界内できわめて重要な地位を占めている。「米国がノーといった製品は中国には供給しないが、ノーでない製品は積極的に販売する」といった決断や、「脱中国サプライチェーンをどう構築していくか」といった判断を迫られることになるだろうが、2大大国が揃って最重要視している半導体産業が今後もさらなる発展を遂げていくのは間違いない。この流れのなかをうまく泳ぎ切って、日本企業がさらに活躍の場を広げていくことを期待したい。



OMDIA 南川明、お問い合わせは(E-Mail: Akira.Minamikawa@omdia.com)まで。
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