新潟・直江津地区の頸城自動車(株)(新潟県上越市石橋2-12-52、Tel.025-543-3781)が運営する「直江津ショッピングセンター」(愛称エルマール、上越市西本町3-8-8)は7月20日、2階部分のGMS店舗跡に世界最大級の無印良品を誘致し、スターバックス、カルディコーヒーファーム、久世福商店など、良品計画の考えに賛同したパートナー企業の店舗も出店した。少子高齢化や過疎化が進む地域だが、良品計画とのタッグで現状打破を狙う。代表取締役社長の山田知治氏に聞いた。
―― 貴社の歴史から。
山田 当社は1913(大正2)年4月の創立。乗合バス・貸切バス・高速バスの基幹事業に加え、自動車整備・不動産・商事・広告・旅行事業を営む。乗合バス事業は収益性の高い事業ではないが、“地域の足”として貢献している。
―― 直江津ショッピングセンターの概要は。
山田 1987年の開業で、当時、イトーヨーカドー直江津店を核に、計65店で運営していた。3階建ての建屋に1、2階が売り場で計約4000坪を展開。3階は駐車場。運営は当社子会社の(株)マルケーエスシー開発が担当している。私は代表取締役会長を務める。
09年度に大型改装を実施した。それから10年経った19年度にイトーヨーカ堂が退店した。
―― GMSは地域の生活を支えていたのでは。
山田 当時、1階に食品スーパーと一部バッグや靴など生活用品、2階に衣料品があったが、衣料品が苦戦しており、また食品スーパーは全体の4分の1の面積で、周辺には地場のスーパーもある。その後、新潟県長岡市に本部を持つピアレマートが出店した。
―― 商圏は。
山田 北側が日本海なので3kmと見ている。平成の大合併で直江津地区と高田地区が、旧市街として上越市に組み込まれた。旧市街に沿って南北に流れる関川の東側にあたる地区には、イオンや地場SMなど比較的商業施設が集積しており、08年ごろからお客様の減少が続いていた。
―― 良品計画を誘致した当初の狙いは。
山田 衣料部門の立て直しをお願いしたかった。良品計画は、単にお店だけを出すのではなく、街づくりや地域興しを一緒にやりましょうということで、直江津ショッピングセンターを拠点に、地域活性化の包括連携協定を上越市と良品計画との3者で結んだ。
―― リニューアルの概要は。
山田 当初の我々の希望想定と異なり、最終的に2階全フロア、約2000坪を賃借したいとの申し出があった。このため、2階にあった衣料品店やスポーツ用品店、寝具店、100ショップなどのテナントは1階に移動していただいた。
―― その仕上がりは。
山田 すばらしいの一言に尽きる。こんなに変わるものかと思った。特に雰囲気だ。従前はイトーヨーカドーの衣料品売り場とテナントが占め、統一性がなかった。これがすべて無印良品のデザインで統一され、飲食エリアの細かい個所まで木質になっている。全体的に柔らかく、やすらぎ癒される空間だ。夏に岩陰に入って一瞬涼しくなる感じだろうか。店内を巡りたい気分になる。散歩するだけでいい。それだけ力を入れていただいた。恒常的な購買につながるかは未知な部分もあるが、弊社としても頑張らなければいけないと痛感した。
―― 地域の核になる。
山田 なると確信する。日常とは違う“異日常”が創出されたと実感した。
―― 運営は。
山田 当社グループが貸与したバスをリニューアルし、良品計画が移動販売バスを展開する。山間部などに無印良品の商品を売る。この行商バスの発想はおもしろいと思うし、コロナ禍で来店できない方がいるなら、自ら行くという発想が素晴らしい。お客様のために何でもやるというスタンスは重要だ。地域の方はお客様であり、多少効率が悪くても、お客様のために出向く。損して得を取る。山間地にお住まいの方もたまに若い人に乗せてもらって、直江津まで来てみようという気になるのではないか。
―― 今後の抱負を。
山田 開業から30年、時代の趨勢もあり減収しているが、集客は伸ばしたい。そのヒントは良品計画にある。着眼点の良さや、社員のアイデアや提案を取り入れるという姿勢に学びたい。
ショッピングセンターに必要なのは、お客様のニーズに合っているかどうか。これでもかというほど顧客ニーズを吸い上げて、付け加えていくことが集客につながる。良品計画では各店舗で週1回のペースでイベントを開催していると聞く。マルケーエスシー開発ではイベントスタッフの増員もしたので、良品計画とともに地域を盛り上げたい。
(聞き手・編集長 松本顕介)
※商業施設新聞2359号(2020年8月25日)(1面)
デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.339