「サンマルクカフェ」や「鎌倉パスタ」を展開する(株)サンマルクホールディングス(岡山市北区)。いずれの業態もコロナ禍から回復し、業績は好調に推移している。その一方で2024年秋、牛カツチェーンを展開する2社を子会社化した。インバウンドの取り込みなどを狙い、売上高1000億円へ向けて『3本目の柱』に育成する考えだ。サンマルクHD代表取締役社長の藤川祐樹氏に直近の動向、今後の展開などを聞いた。
―― 直近の状況から。
藤川 コロナが5類に分類された23年5月から月を追うごとに回復し、コロナ前から比較しても売り上げは110%近くになった。業態別にみると、サンマルクカフェは客数がコロナ前比で80%程度と回復しきっていないものの、客単価が約145%に伸びたのが特徴だ。物価高でコーヒーの値段が上がっただけでなく、プレミアムチョコクロとして390円など高価格帯の商品を展開しており、これが支持されている。また、最近はスムージーやパフェのラインアップを充実させており、コロナ前と比べると商品の内容が変わってきた。鎌倉パスタも好調で、こちらは客数も回復しつつ客単価も伸びている。
―― カフェは競争が激しいですが、サンマルクカフェはどういう層や滞在を狙っていますか。
藤川 差別化のカギとなるのはパン。サンマルクカフェは焼きたてのパンを提供しており、これは競合にはない強み。改めてベーカリーカフェとしての特徴を出していきたく、コロナ前と比べてパンのラインアップはおよそ倍になっている。また、パフェなどのデザート系も拡充しており、セルフカフェとフルサービスカフェの間を狙っている。デザート系が充実していることもあって商業施設に出店した際、目的来店として数人のグループに来店していただける。スムージーや「昭和レトロクリームソーダ」などの商品を展開していることで最近は10~20代などの若年層も増えてきた。
―― コロナ禍から回復している中で「京都勝牛」を展開するジーホールディングスを買収しました。その狙いは。
藤川 インバウンドの取り込みが特に大きい。我々が展開しているブランドはカフェ、レストランなどで、インバウンドの取り込みに課題感があった。今後もインバウンド消費は続くとみられ、インバウンドに強い業態を持つことは海外事業の拡大にもつながる。そこでてんぷら、かつ、うなぎ業態などをM&Aの対象として注目しており、縁があって京都勝牛を展開するジーHDを子会社化した。
―― 様々な料理がある中で牛カツを選んだのはなぜですか。
藤川 日本人はカツといえばトンカツを思い浮かべる人が多いと思うが、海外では宗教的に豚肉を食べられない人も多く、グローバルで見た時には牛カツのほうが強い。実際、京都勝牛はインバウンドによる行列ができている店が多い。しかも5000円するような高単価の商品が人気で、客単価が非常に高い。ジーHDを子会社化した後、「牛かつ もと村」を展開するB級グルメ研究所ホールディングスも子会社化した。牛カツとしてチェーン展開しているのは京都勝牛ともと村だけなので、牛カツマーケットで独占的なシェアを取ることができる。
―― サンマルクHDのノウハウをどのように生かしていきますか。
藤川 店舗開発や物流のノウハウを活用して積極的に出店していきたい。これがM&Aの肝でもある。グループ入りした2社はともに営業利益率は高いが、店舗は首都圏と関西圏に集中していた。これは物流網が首都圏、関西圏までしか整っていないことや、出店ノウハウ、商業施設とのコネクションなどに課題があったためだった。グループ入りしたことでサンマルクグループの物流網や店舗開発ノウハウを活用できるようになるため、北海道などインバウンドが多いエリアにも出店できるようになった。すでにデベロッパーからも相当な出店の引き合いをいただいており、インバウンドを取っていきたいデベロッパーからは特に魅力的に映っているようだ。もと村の坪効率は平均99万円ほどと、いずれの業態も高効率。京都勝牛、もと村ともに15坪、20坪でも出店できるし、京都勝牛は大阪・関西万博で127坪の大型店にもチャレンジする。これが成功すれば新しい店舗フォーマットができる。
―― 牛カツ業態は会社の成長戦略でどのような位置づけになるのでしょう。
藤川 サンマルクHDの24年3月期における売上高は645億円だったが、我々は売上高1000億円を目指している。現在、カフェ、パスタという2本の柱があり、カフェは拡大の余地があるし、鎌倉パスタでは「おだしもん」という出汁パスタを提供する派生業態を作るなどしており拡大の余地はある。ただ、1000億円を目指すにはもう一つエンジンが必要で、それを担うのが牛カツ。将来的に牛カツ業態は3つ目の柱になってほしい。
―― 新たなM&Aもあり得るのでしょうか。
藤川 1000億円に向けてM&Aは引き続き検討しており、すし、てんぷらなどの業態にアンテナを張っている。M&Aだけでなく業態開発も引き続き進めたいが、自社開発にこだわらずデベロッパーと共創することも積極的にやっていきたい。例えば24年2月にニュウマン新宿でオープンしたベーカリーカフェ「Petrichor Bakery and Cafe」はニュウマンとアイディアを出しながらつくった業態。M&Aを含めて他社の力を取り入れる風土を作り、会社を成長させていきたい。
(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2586号(2025年3月4日)(8面)
経営者の目線 外食インタビュー