商業施設新聞
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No.772

密集状態が恋しい


北田啓貴

2020/9/8

 先日、いつも聴いているラジオ番組で司会者がライブ映像を見て、こんな感想を述べていた。「人々が『密』になってライブを楽しんでいて、泣いてしまった」。確かに、新型コロナウイルスが日本で本格的に拡大し始めた3月から、観客が密集した音楽ライブやイベントが続々と中止になった。それから半年過ぎた現在も、無観客での配信や感染症対策を徹底したものばかりで、現場で観客が大声を上げ、盛り上がっている感じのライブやイベントは行われていない。

 筆者も最近、観客が密集した映像を見て泣くことが増えてきた。テレビで昔の音楽ライブ映像やスポーツ映像が流れると、曲や選手のプレーではなく、まず観客同士が距離を気にせず盛り上がっている状況に目がいき、感動してしまう。要するに、人々が密集した状態が恋しいのだ。

1月に開催された「SCビジネスフェア2020」の様子
1月に開催された
「SCビジネスフェア2020」の様子
 1~2月にかけて参加したイベントが懐かしい。1月は横浜で「SCビジネスフェア2020」に参加し、デベロッパーから外食、店舗設備などの企業が密集してブースを出展していた。参加者もほとんどの人がマスクをせず、他人同士の距離を気にしないで話していた姿が今では愛おしく感じる。

 そして2月上旬はプライベートで、横浜で開催されたTBSラジオのイベントへ遊びに行った。会場は多くの観客で賑わい、筆者も好きなラジオ番組のパーソナリティが参加した出し物をできるだけ近くで見るため、ほぼ満席状態の中から空いている座席を見つけ、ソーシャルディスタンスも気にせず楽しんだことがいい思い出となっている。

 加えて、広場が隣接している商業施設では例年なら日常的に何かしらのイベントが開催されていたものだが、現在では見かける機会が減り、賑わいがなく、物足りない。コロナウイルスの感染拡大前の状態の日常風景がいかに尊いかを、日を追うごとに実感している。

 だから、「早く『密』を気にせずたくさんの人々とライブやイベントに参加して楽しみたい」「街中も早く人々で賑わった活気あふれる風景を取り戻してほしい」。人混みが嫌いで、インドア派な筆者でもそう思ってしまう。1日も早い新型コロナウイルスの終息を願うばかりである。
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