2020年1月に創立70周年を迎えた琉球海運(株)(沖縄県那覇市西1-24-11、Tel.098-868-8161)は、沖縄県内海運最大手として、同県の経済や産業発展、県民生活を支えてきた。19年度の売上高は前年度に続き過去最高を記録し、22年秋には、県内最大級の総合物流拠点「琉球ロジスティクスセンター」の開設を控える。コロナ禍の逆風も避けられない中で、最近の取り組みや今後の戦略について、指揮を執る代表取締役社長の宮城茂氏に話を伺った。
―― 琉球ロジスティクスセンターを開設します。
宮城 当社が設置・運営する物流センターとしては、19年に稼働した糸満総合物流センター、那覇港総合物流センター、中城総合物流センターに続き県内4拠点目となる。当センターは沖縄の母港である那覇港新ふ頭から10km圏内に位置し、那覇空港からも近い。立地する豊見城市は地理的優位性から近年開発が進み、海と陸の物流をつなぐ場所として魅力があった。また、核企業として入居するイオン琉球の方針と合致したことも大きい。当センターの建設により、配送距離の軽減や物流の効率化が期待できる。
―― 直近の業績は。
宮城 20年3月期売上高は、約225億円で過去最高となった。増収減益だった理由は、19年9月に貨物船を1隻就航させ7隻体制にしたことや、船員の増員により人件費が増えたこと、センターの開設など先行投資が膨らんだことによる。一方、生活物資を中心に県内向けの貨物需要が堅調だった上、物流センターの賃料収入が大幅に増えている。21年3月期については、貨物船の投入効果がフルに寄与する一方で減価償却は減るため、売上高約240億円、経常利益約25億円と増収増益を見込んでいる。
―― 課題などは。
宮城 新型コロナウイルスの影響で一部貨物の荷動きが鈍ったこともあり、4~5月の売上高は、前年比で10%程度減少した。しかし、コロナ禍により巣ごもり消費が増加するなど、生活物資は必要であるため、貨物需要は底堅く推移するとみている。一方、物流センターについては、人手の確保が当面の課題であると考えており、特に、トラック運転手の確保が難しい状況にある。
―― 市場におけるポジションや今後の戦略について。
宮城 当社の海運事業は、沖縄全体の90%以上を占めている。国内全体でも沖縄航路で約4割、宮古島・石垣航路で約5割のシェアだ。沖縄と本土を結ぶ国内6つ(東京、大阪、福岡、鹿児島、宮古島、石垣島)の航路を有するほか、近年は台湾航路の開設など、アジアを中心とした海外展開も視野に事業を拡大している。台湾航路は当社の海上輸送全体の約3%にとどまるものの、沖縄の地理的優位性を生かし、九州一円から将来的には香港、ベトナム、シンガポールなどアジアを視野に、物流ネットワークのさらなる拡大を目指す。
―― 貴社の強みについて。
宮城 当社の特徴は、海上運送における「オーナー」「オペレーター」「船舶管理」を分散せずに1社でまかなっているという点であり、そこが強みであると考えている。また、RORO船は、沖縄航路では最大の積載量を誇っている。
当社は“海と陸”両方でお客様のニーズに応え、より質の高い物流サービスを提供することを目指している。そのためにも、既存の海運事業にしっかりと取り組むとともに、今回のようなロジセンター建設など、陸の整備にも力を入れていく。
今後も「海の安全、陸のサービス」という指針に基づき、「お客様を大切にする、地域社会に愛される、社員が生きがいを感じる企業」を経営理念に、地域社会の発展に貢献していく。
(聞き手・本紙編集部)
※商業施設新聞2358号(2020年8月18日)(4面)