電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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コロナ禍でも出荷増を維持


~イメージセンサー市場~

2020/7/31

 当社の調べによると、2020年1~3月期のスマートフォン(スマホ)出荷台数実績は、新型コロナウイルスの影響で前年同期比16%減の2億7570万台にとどまった。下期にかけては一定程度の回復を見込むが、通年の出荷台数は前年比13%減の12億台強に減少すると予測している。ただし、世界では感染拡大の第2波と受け取れるような状況が続いており、需要がさらに下ぶれする可能性もあると考えている。

 一方で、ポストコロナ時代を見据えると、IT機器へのニーズが今後は大きく変わってくる可能性が高い。スマホやPCの2台目需要といった既存製品の底上げに加えて、リモートワーク専用端末の登場、それに伴うリアルタイム翻訳や音声認識、AR/MR技術の普及、ソフトコンテンツの充実などが加速すると想定され、「リモート特需」と呼べる状況が生まれるのではと期待している。

 こうしたニーズに不可欠なのが「カメラ機能」だ。例えば、PCのフロントカメラはこれまでVGA~1.3メガピクセルが主流だったが、リモートワークの増加に伴い、今後はHDが標準になり、2メガ以上の解像度が必須になるとみている。現にWeb会議の機会が増えるにつれて、PC内蔵カメラから高機能の外付けWebカメラに乗り替えるユーザーも出ている。

 カメラに不可欠な撮像デバイスがCCD/CMOSイメージセンサーだ。当社では、仮に20年のスマホ出荷が13%減少しても、イメージセンサー市場は数量ベースで前年比横ばい、あるいは微増を維持できると考えている。19年市場は40億個だったと推定しているが、今後もスマホを主力市場として「多眼化」と「シリコンサイズの大型化」、そして「ToF(Time of Flight)センサーの普及」で右肩上がりが続くと考えている。

 当社がスマホ上位7社を調査した結果、スマホ1台に2つ以上のカメラを搭載したモデルは20年1~3月期時点で7割を超えた。3つ以上のカメラを備えたモデルに限定しても5割に達しており、OPPOは3カメラ以上のモデル比率が9割近くに達している。最新モデルでは5カメラを搭載する事例も出ており、これがイメージセンサーの需要を押し上げている。

 マルチカメラを備えたスマホは20年に75%、22年に80%、27年には90%に達すると予想しており、これによってスマホ用イメージセンサーの需要は22年に50億個、24年に60億個、28年には70億個まで拡大していくだろう。

 スマホ用にもう1つ期待できるのが、ToFセンサーの搭載増だ。前述の可視光イメージセンサーは「撮像」が主用途であるのに対し、ToFセンサーは「測距」に使われ、用途が異なる。その代表例がアップルの顔認証システム「Face ID」であり、今後はAR/MR技術をスマホに導入するために不可欠なセンサーになっていくと考えている。

 可視光イメージセンサー市場はソニーが過半のシェアを握っているのに対し、ToFセンサーはアップルを顧客に持つSTマイクロエレクトロニクスが強い。今後は顔認識システム以外の用途でiPhoneへの搭載が確実視されるため、さらなる市場拡大が期待できる。ToFセンサー市場は現状でSTとamsの2社が過半のシェアを握っているが、今後はソニーにとっても新たな収益の柱になるだろう。

 そのソニーだが、20年1~3月期のイメージセンサー売上高は前年同期比25%増の17億6500万ドルとなり、コロナ禍にあっても大きく伸びた。スマホ&カメラメーカーからの値下げ要求が強まっているが、製造技術や品質で差別化できているため大きく値崩れはしていない。

 現状ではソニーのイメージセンサー事業に大きな死角は見当たらないと考えているが、あえて挙げれば、ISP(Image Signal Processor)をはじめとする信号処理やエッジ処理への対応だろう。積層型センサーのロジック部分をTSMCに外部生産委託で拡大する動きなどが報じられているが、ソニー自身は得意とする貼り合わせ技術などに自社の生産能力を特化させていくのか、今後の設備投資動向に大きな注目が集まる。

 一方で、ライバルのサムスン電子は、先端ロジックとイメージセンサーの双方を自社工場で量産できることが優位性につながる可能性もある。サムスン電子はソニーの重要顧客の1社であるが、ソニーへの対抗手段として「一貫生産」を武器にするのであれば、引き続きソニーにとって侮りがたい強敵でもあり続けるだろう。
(本稿は、李根秀氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)



Omdia 李根秀、お問い合わせは(E-Mail: KUNSOO.LEE@omdia.com)まで。
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