商業施設新聞
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No.762

ウィズコロナ時代の新たな飲酒の光景


北田啓貴

2020/6/30

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言発令で、在宅勤務をしなければなくなった。自宅で仕事し、休日も自宅で過ごす。以前とは異なる新しい生活様式への適応能力が求められ苦悩する反面、大きな変化が起こりつつある。そのひとつが、人々が「酒を飲まなくなった」ことではないか。筆者自身、以前からあまり自宅で飲酒する習慣がなく、酒を口にするのは外食時のみだった。そのため、ここ最近は外出自粛で友人らとも酒を飲む機会が減り、ほとんど口にしなくなった(世間的にはむしろオンライン飲み会で、飲酒機会が増えたという人も多数いるだろうが)。

 こうした状況から考えても、厳しさを増していくのは、居酒屋など酒の提供をメーンとした飲食店だろう。以前から若者の酒離れが進んだことで、業績が伸び悩んでいた分野ではあったが、今回のコロナウイルスの影響でさらに悪化し、チェーン展開している企業では大量閉店せざるを得ない状況に陥っているところもある。新型コロナウイルスとの共存、すなわち“ウィズコロナ”の時代をどう乗り越えていくのか、課題が突きつけられている。

5月末にリニューアルオープンした「出汁と麺 ときどき 和パスタ 腹一杯 中崎町店」
5月末にリニューアルオープンした「出汁と麺
ときどき 和パスタ 腹一杯 中崎町店」
 そんな中、筆者は5月、大阪でリニューアルオープンした中華そば店「出汁と麺 ときどき 和パスタ 腹一杯 中崎町店」を取材した。運営しているのは、東京近郊や関西エリアで飲食店の運営やプロデュースを行っている(株)カームデザインで、この店もリニューアル前は、肉おでんと野菜巻き串を提供する「ハライッパイ」という酒場業態だった。担当者によると、中華そば業態は新型コロナウイルスの感染拡大前から開発していたが、感染が拡大していく中で「夜の遅い時間までお酒を楽しむ人が減っていく」と見越した同社は開発を加速させ、5月31日の出店に至ったのだという。ただ、同店については新型コロナウイルスの影響で変化する人々の新たな生活状況を見ながら、酒場業態の「ハライッパイ」へ戻すことを前提に同店を運営していく。

 また、居酒屋やバーなど全国で様々な飲食店を展開する(株)きちりホールディングスは、5月に東京都新宿区にある「KICHIRI新宿店」を、新型コロナウイルス感染の原因となる飛沫を防ぐためのアクリルパーテンションをテーブルに設置したり、希望者にはタブレット端末などを貸し出し、オンライン飲み会もできるようにするなど厚生労働省の「新しい生活様式」に対応した店舗へとリニューアルしている。

 この2つの店舗の取り組みを通じて筆者自身が考えたのは、「あまり飲みに行かない」や「飲み会は少人数で」という人々の新しい生活のニーズに適応していこうとする企業努力で、新型コロナウイルスが終息し、“ウィズコロナ”の時代の新しい日常の光景を垣間見られるのではないかということだ。筆者自身の生活習慣も含め、楽観的ではあるが終息後どんな変化が起きるのか、今から楽しみだ。
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