今般の新型コロナウイルス感染症拡大で、とりわけ観光産業、外食産業が大きな打撃を受けた。夜間の営業時間が制限され、ランチに力を入れている店を応援したい気持ちに駆られた筆者は、以前から行ってみたいと思っていた「わらやき屋」、「串カツ田中」、「福の家」(しちふくグループ)のランチを食べに行ってみた。
わらやき屋は、土佐料理(かつお、はちきん地鶏)と酒を名物にしている店で、東京の上野御徒町店では「藁焼きかつを定食」を注文した。塩たたき5貫、鰹おなか唐揚げ、鰹ネギトロ冷奴、の鰹三昧の料理に、サラダ、あおさ味噌汁、おかかごはんが付いた定食は1000円でお得。同店は、カウンター越しに客の目の前でかつおのたたきを藁で焼くファイヤーショーも演じており、見ごたえ十分だった。土佐料理を視覚と味覚の両方で楽しむことができ、1000円の料金は満足度が高い。DDホールディングスによる経営であることも発見だった。
また串カツ田中・上野御徒町店では、10本の揚げたてあつあつの串揚げが10本並ぶ、特製串カツC定食を注文した。ランチだからといって作り置きではなく、客の注文後に一本一本を丁寧に揚げる仕事ぶりで、運ばれてくるまでに少し時間がかかったが、蓮根、紅生姜、鶏肉、豚肉、ウズラ卵、シイタケ、玉ねぎ、ソーセージなどの揚げたての串揚げが食べられ、これにポテトサラダ、生野菜、トマトが付いた定食で880円はコストパフォーマンスの良いランチだった。ソースの二度付け禁止の同社は、新型コロナウイルス感染拡大防止への対策として、ソースは客ごとに廃棄、間隔を空けての席配置、こまめな換気、店内のメニュー・調味料の消毒、従業員の出勤前の検温の徹底など気を使っている。串揚げの細かな食材とともに、コロナ対策にも配慮が行き渡っている。
さらに別の日、「福の家」では土佐丼・ミニカレーうどん(880円)を注文した。丼のご飯の上に乗った“かんぱち”と“ひらめ”の新鮮な味は見事。同店はこのほかに、大分県産・肉厚しいたけのにんにく味噌焼き、鳥取県産・大山鶏の西京粕漬け焼きなど、西日本を旅行した気分にさせてくれる名物を提供する。筆者は、店を出る際に忘れ物をしてしまい、同店はJRお茶の水駅前のサンロイヤルビルの5階にあるのだが、ランチの忙しい時間帯にもかかわらず、店のお姉さんが1階にいた筆者に届けてくれた親切さには感激がひとしおだった。
日本フードサービス協会(JF)の4月度調査によると、同月の外食全体の売上は前年比60.4%と、同調査開始以来最大の下げ幅だった。中でもパブは同4.1%、居酒屋は同9.7%と1桁台、またディナーレストランは同16.0%、喫茶は同27.6%とそれぞれ壊滅的な打撃を受けた。5月になってからは、中旬から下旬にかけて新型コロナの緊急事態宣言が解除されたものの、同月の外食産業も4月と同等の影響があったものと推察される。
外食産業は、配達や持ち帰りなど、巣ごもり消費にも対応できるように様々な工夫を凝らしている。新型コロナ禍で落ち込んだ分を取り戻して立ち直るまでに時間がかかりそうだが、早く活気が戻ることを願ってやまない。筆者の外食産業への応援は今後も続く。