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第2回

広島県知事 湯崎英彦氏


医工連携で1000億円目標、ベンチャー育成は重要と認識

2012/7/16

 広島県は、2011年7月に策定した「ひろしま産業新成長ビジョン」において、新たに医工連携プロジェクトを立ち上げた。特徴としては、単純な医工連携だけでなく、医療と県の地場産業である自動車分野との連携を進めるなど、その取り組みは全国でも例を見ない。経済産業省出身でありながら、ベンチャー企業を設立した経験もあるという異色の経歴を持つ湯崎英彦広島県知事に、現状の取り組みおよび企業誘致、ベンチャー育成などについて話を伺った。

―― 知事の基本理念を教えてください。
湯崎 組織の原理は役所でも企業でも同じだと考えている。企業は利益確保のほか、社会的ミッションや哲学を持っているが、本来は役所の方がそういうものを持っていなければならない。実は民間よりも、もっと深く組織の目的を考えなければならない。しかし、考えないから組織として弱くなってしまうのだ。
 また役所は、良い制度を作れば民間にすぐに使われるだろうと考えている。それは大きな間違いだ。私は、企業誘致はもとより、あらゆる政策は営業だと思っており、政策を作ったら積極的に売りにいかなければならない。常々、県庁の人間には「とにもかくにも営業に行け」と言っている。

―― 企業誘致の基本的なスタンスを。
湯崎 企業誘致と県内の企業育成は二本柱で考えなければならない。企業誘致は、雇用ならびに所得の増加が見込まれ、経済効果は高い。そのため、当県でも補助金の増加や制度の見直しなどを進めている。しかし、企業は来るだけでなく、県外に出ていくこともある。それが大企業であればあるほど影響も大きい。そのため、魅力ある政策作りで県内の大企業の流出を食い止める努力が必要だ。
 外資系企業の進出についても大歓迎だ。ただ、情報収集が難しい。経済産業省が外資系企業の立地サポートを始めたが、それと連携を取りながら、広島県でも取り組みを進めている。

―― 知事はベンチャーを立ち上げられた経験があるが、この育成についての
    お考えは。

湯崎 ベンチャーの大変さ、ならびにその重要性は体験的にも十分認識している。県では、ベンチャー支援だけでなく、ある程度確立した事業を持ち、かつ次のシーズを持っているような企業への支援システム構築も進めている。
 現状、日本経済の問題点の1つとして、経済全体に対する新陳代謝の少なさを感じている。米国は、企業内に新しい組織を立ち上げることで、経済のダイナミクスを生み出している。日本として、米国のコピーになる必要はないが、新陳代謝を高めていくうえで、ベンチャーが大事であるのは間違いない。
 しかし問題は、イノベーションを起こせる人材はいるが、それを形にしていくマネジメント能力がある人材が日本には少ない点であろう。

―― 新たな取り組みについて、自動車と医療の医工連携とは珍しいですね。
湯崎 広島県にとって、マツダならびにその系列企業は大きな比重を占める。そのため、その強みをどう活かしていくかが、今回のクラスター形成においても重要であると考えた。
 現在、プロジェクト自体はまだ大きくなっていないが、積み重ねていきながら、今後イベントなども行っていければと考える。期間については10年くらいのスパンで考えており、医療分野における広島県の生産額を、現在の100億円規模から10倍の1000億円規模に伸ばしていきたい。

―― 広島県民の良い点ならびに悪い点は。
湯崎 良い点として真面目なところが挙げられ、物事に対してコツコツ取り組む気質がある。逆に、悪い点として、かなり保守的なところがある。元々は広島にもベンチャーは多く、世界中に移民に行くような気質であった。
 ところが「消費県」から「生産県」への転換を図り、所得が伸びるなか、安定志向になってしまったのかもしれない。昔の気質を取り戻せば、真面目な気質を活かし、再び成長していけると思う。

―― 広島県の売りは。
湯崎 食べ物が挙げられる。魚や米、りんご、ぶどうといった果物など、生産量は低いかもしれないが、味は負けない。また、現在、NHKの大河ドラマ「平清盛」が放映されているが、平清盛は「安芸守」の先輩なので注目している。

(聞き手・特別編集委員 泉谷渉/浮島哲志記者)

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