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第3回

ノースカロライナ州政府日本事務所代表 リーランド・ガスキンズ氏


自動車・航空機部品に産業がシフト、高い労働生産性で日本企業を誘致

2015/6/30

 ノースカロライナ州は、米国南東部に位置する州で、面積は13.9万km²で日本の36%程度。人口は975万人、GDPは4260億ドルで、ビジネス環境の面などから、日本企業の進出先として注目されている。今回はノースカロライナ州政府日本事務所代表のリーランド・ガスキンズ氏に、企業誘致の状況や立地環境などについて話を伺った。

―― ノースカロライナ州の産業の現状は。
 ガスキンズ 以前は繊維、家具、たばこなどが中心だったが、現在は自動車、航空機の部品がメーンになりつつある。業界は変わりつつあるが、製造業が中心であることは変わりがない。しかし経済は多様化しており、IT、通信、製薬、バイオテクノロジーのR&D施設の主要地となっており、バイオ医薬品の製造も行われている。金融サービスの集積も進み、シャーロットはニューヨークに次ぐ全米第2位のファイナンスの街でもある。

―― 日本企業の進出状況は。
 ガスキンズ 2005~15年の間に日本から25億ドルの投資があり、6500人の雇用が創出されている。投資金額では自動車および重工業が一番多く、次いで航空機産業、ライフサイエンス、繊維と続いている。自動車産業では、アイシンAW、ケーヒンなどが進出しており、アイシンAWが第2工場の新設を発表している。航空機産業ではホンダジェットの工場がある。ライフサイエンスではエーザイが進出している。進出地としては、シャーロット、グリーンズボロおよびウィンストン・セーラム地域、ローリー/ダーラム/リサーチ・トライアングル・パーク地域に集中している。シャーロットは中心部に本社やセールスオフィスが集中しており、周辺部に重工業が立地しているが、中心部の地価が高いため、ケーヒン、FCC、京セラなどはあえて周辺部にオフィスを置いている。ローリー/ダーラム/リサーチ・トライアングル・パーク地域は、ハイテク産業が集中しており、世界中から進出している。リサーチ・トライアングル・パークは、シリコンバレーと並ぶ、科学技術の世界的な研究開発拠点で、200以上のR&D関連企業・団体が集結し、5万人が働いている。グリーンズボロ周辺にはホンダの関連企業が集まっており、ホンダ・エアクラフト・カンパニー、ホンダ・エアロ・インク、ホンダ・パワー・イクイップメントが進出している。

―― ノースカロライナ州への進出のメリットについて。
 ガスキンズ ハイテク産業にとっては、リサーチ・トライアングルに大学や研究環境が整っていることが挙げられる。大学から労働力を提供することも可能だ。また、雇用開発助成金やワン・ノースカロライナ基金、産業開発基金、運輸省道路・鉄道整備基金、コミュニティ開発ブロック助成金などの各種助成金や減税プログラム、従業員トレーニングプログラムなどの各種サポートも充実している。労働力も豊富で、質の高い人材が揃っている。生活コストや建設費なども低い。
 住環境も良く、優れたクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を提供できる。州内の都市のいくつかは全米で移り住みたい都市に選ばれている。公的教育も充実しており、気候も温暖。山やビーチなど自然環境も良く、ゴルフコースも400コースあり、多彩なレジャーが楽しめる。優秀な人材をリクルートしやすい環境になっている。

―― 労働力の面では労働生産性についてのレポートをまとめられていますね。
 ガスキンズ 自動車産業の労働生産性についてレポートをまとめた。米国の各州で比較すると、労働組合への加入率が低いことと労働生産性が高いこととの間に強い相関があることが分かった。米国では、州や地域によって労働組合の加入状況が大きく異なるが、ノースカロライナ州は労働組合加入率が1.2%と最も低い州となっている。また、組合は政治的影響力を有しておらず、ノースカロライナの文化には溶け込んでいない。工場や拠点の設置にあたっては、労働生産性は重要なファクターの1つであり、その点でもノースカロライナへの進出のメリットの1つといえる。

―― ビジネス環境ランキングの上位に選ばれていますね。
 ガスキンズ CNBC、フォーブス、サイトセレクション、チーフエグゼクティブのビジネス環境に関する4つの主要ランキングについて、ノースカロライナ州は07~14年の8年間の平均が4つのすべての発表でトップ5に入っている。

―― 進出にあたっては物流も重要です。
 ガスキンズ ノースカロライナ州は広域ハイウェイ・システムが整っている。7本のインターステート・ハイウェイが整備されており、また鉄道も約5800km敷設されている。インターステート・ハイウェイ沿いが特に交通の便が良く、自動車産業の進出が多い。ドイツ、韓国、日本の自動車産業が米国南部に集中しているので、アクセスしやすい場所に集まる傾向がある。
 ノースカロライナ州はまた、東海岸のほぼ中央に位置しているため、発達した交通網で商品の輸送を効率的に行うことができる。半径1100kmの範囲内に1億7000万人の消費者がおり、全米100の主要都市のうち65があり、全米の小売販売高の58.2%が含まれる。
 州内に国際空港は4つあり、シャーロットの空港は、アメリカン航空が2番目のハブ空港としている。1日に160のフライトがあり、米国内すべてのエアラインが揃っている。大深水の港は2カ所あり、ウイルミントンの港はコンテナ船が停泊できる。モアヘッド・シティの港はばら積み船が中心。近隣の州にも大きな港があり、輸出拠点としての環境も整っている。

―― 企業にとっては住環境も重要になります。
 ガスキンズ ノースカロライナには日本人コミュニティがあり、日本語補習校もシャーロットとローリーにある。数多くの日本食レストランや日本食販売店があり、日本人家族向けに、クラブ、教会、大学教育なども用意している。州内には公的大学が16校、私立大学が35校あり、日本語教育も行っている。外国人に対するコミュニティがあり、温かく受け入れている。

―― 日本でのノースカロライナ州の評判は。
 ガスキンズ 一般の人ではイメージがわかないこともあるが、IBMやグラクソ・スミスクラインなどの多国籍企業が拠点を置いていることもあり、ビジネスの世界では定評がある。企業誘致に関しては、自動車をメーンとしているがこだわりはなく多くの様々な企業に来てもらいたい。直近ではある商社が米国本社のノースカロライナ移転を決定した。14年には森永製菓が投資を決定している。どんな業界でも歓迎しており、多くの企業とお話をしたいし、実際に来てもらいたいと思っている。

(聞き手・本紙編集長 植田浩司)

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