電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第384回

ポスト・新型コロナウイルスの世界経済は半導体産業が引っ張る


~データセンター投資は中国だけで30兆円、メモリー、CPUに好影響もたらす~

2020/5/22

 新型コロナウイルスショックは第2次世界大戦に匹敵するほどの負のインパクトである、との認識が広がっている。感染数は実に400万人を大きく突破してしまった。死者は30万人以上となっていく勢いであり、とりわけ米国における死者数はベトナム戦争を大きく上回るという有様になっている。

 さて、こうした状況下にあって世界ではほとんどの基幹産業が一気後退を余儀なくされている。しかして、唯一“元気印”の産業があることをご存じであろうか。それすなわち、半導体産業なのである。

 新型コロナウイルスの蔓延により、世界中のオフィスがテレビ会議、そして在宅によるテレワークを余儀なくされている。Wi-Fiを慌てて家庭に導入する人たちも多く、またマイクロソフトのコミュニケーションツール“Teams”を新たに導入した企業もたくさんある。当然のことながら、ノートPCの新たな購入、さらには買い替え需要が世界すべてで大きく上昇してきた。

 タブレット端末についても普及熱が再加速してきている。この1~3月期においてはスマートウオッチ市場も前年同期比20%増と好調であり、1370万台の出荷台数となっている。シェアはトップが米国アップル(55.5%)、2位は韓国サムスン電子(13.9%)となっており、この2強が大きく他を引き離している。新型コロナウイルスの感染拡大で健康管理への関心がにわかに高まってきており、日常的なヘルスケアを実現するスマートウオッチの伸びしろは高い。

 さらにゲーム大手の任天堂は、自宅でゲームで時間をつぶす巣ごもり需要の高まりを反映し、1~3月期はまあすごいことになった。『あつまれ動物の森』(あつ森)は6週間で1341万本を販売、スイッチでは過去最高を記録したのだ。これを反映し、同社の2020年3月期の純利益率は20%、前期比で33%増の純利益をあげることになった。

 こうした新型コロナウイルスがもたらした特需の裏にはすべて半導体産業が関係している。半導体なくしてすべてのモノは作れない、からである。

 コロナショック騒動下にあって、2020年3月の世界半導体売上は3兆7000億円強となり、前年同期比0.9%増を記録した。このうち中国市場は前年同期比4.5%増となっている。新型コロナの特需はもちろんあったわけであるが、それ以上にデータセンターなどで使うサーバー向けの需要が堅調に伸びていることが大きい。

 「中国のデータセンター投資は全く止まらない。チャイナモバイル、ユニコム、テレコムのビッグ3は5G立ち上げについて2.8兆円の大型投資を直ちに断行することを決めている。この投資効果の波及は大変なものだ。しかし、この投資が実行されても、2020年に50万の基地局が整備されるだけだ」

(株)東海東京調査センター 石野雅彦氏
(株)東海東京調査センター 石野雅彦氏
 静かに、しかし内に秘めた情熱を隠すことなく、こう語るのは(株)東海東京調査センターにあって、半導体ウオッチングアナリストとして知られる石野雅彦氏である。石野氏によれば、中国は全体として500万局以上の基地局を設置する計画であるため、この後出てくる設備投資を含めれば、30兆円を超える5G基地局に対する中国の巨大投資が出てくることになる。

 さらに民間のIT大手であるテンセント、バイドゥ、アリババなどの設備投資を加えれば、中国のデータセンター投資額はひたすら巨大化してくる。とりわけ、アリババは今後5年間で3兆円を投入し、データセンターなどのクラウドコンピューティング構築に全力を挙げる、というのであるからして、ただ事ではない。

 米中貿易戦争を戦い、米国政府を真っ向敵に回し、新型コロナウイルス問題ではドイツ、フランス、イギリスからもあまり良くない眼で見られている中国ではあるが、5Gさらにはデータセンターというキーワードでは世界を引っ張る存在であることは間違いない。

 データセンターはDRAM、フラッシュメモリーなどのメモリー半導体を膨大に消費し、かつMPU、GPU、FPGAなどの最先端ロジックデバイスを非常に多く使うわけであるからして、今後の半導体産業の一大牽引車になっていく。そして、5G通信基地局のデータセンター設備の世界最大手はこれまた中国のファーウェイであるからして、当面の間、世界の半導体メーカーは中国に頭が上がらない、という厄介なことが、新型コロナ後の世界には待っているのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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