新型コロナウイルスが全国各地に蔓延し、店舗の閉店や企業の破産など暗いニュースが飛び交う中で、(株)ニトリホールディングスは相変わらず好調を維持している。先日の本紙でも「34期連続増収増益へ」という見出しが示すとおり、つくづく、この厳しい中でも売り上げを伸ばすのはすごいなと感心した。筆者が担当する西日本エリアでも、ニトリのような企業はいないかと考えた時、ある会社が頭に浮かんだ。それが、堺市に本社を置くコーナン商事(株)である。
同社は大阪府内を中心に店舗展開を図り、ホームセンター事業や建築職人向け小売業などを行っている。これまではホームセンター業態、ホームストック業態、PRO業態の計3業態を展開してきたが、最近はホームセンター業態とPRO業態の2業態に注力している。2019年度(20年2月期)は(株)建デポとドイト(株)を子会社化し、関東の店舗体制を強化。地盤の関西でも、競合他社との競争は激しいものの、ドミナント体制を構築し、19年度の連結業績は増収増益であった。
ニトリのようなと書いたが、これは売り上げ規模や店舗展開について触れたのではない。同社は景気が悪い不況の時ほど、なぜか売り上げを伸ばす傾向にある。例えば、大阪府北部が地震に見舞われた18年6月。関西で多数の店舗を展開する同社も被害に遭ったが、18年度の売上高は、前年度比5.5%増の好業績を叩き出した。当時、決算説明会ではその理由について、壊れた屋根を覆うブルーシートがよく売れたと言っていた。今回もコロナ騒動で小売り各社が厳しい決算を発表する中、同社は増収増益を記録。その要因を電話で尋ねると、特に好調だったのが、主力のホームインプルーブメントでも、日用品のハウスキーピングでも、はたまたペット・レジャーでもなく、意外にも100円ショップの「ダイソー」であった。
なぜ好調だったのか。それはコロナに関連するマスクの存在だ。同社は近年、ダイソーをフランチャイズ店として導入しており、ドラッグストアでマスクが品薄になり始めたころ、100円ショップにマスクが置いてあるという情報がSNS上に拡散した。これで普段は来店しない顧客まで、コーナンの店舗に足を運ぶようになった。その結果、2月の既存店売上高は対前年比112.4%を記録。3月も既存店が同109.2%と好調が続いており、20年度(21年2月期)の業績もさらなる伸びが期待される。
海外展開も意表を突く。同社は16年7月、ベトナムに1号店をオープンし、現在は3店まで増やしている。20年度も3店を新規出店する予定など、積極的な展開を見せる。ホームセンターの海外展開はあまり耳にしないうえ、その出店先がイオンモール内というのも面白い。日本ではイオンモール内にほとんど出店せず、むしろコーナンの店舗内にテナントを誘致するなど、イオンモールと競合する動きを見せる同社が、ベトナムではイオンモール内に相次いで出店する、不思議な動きだと思う。
6月に本社が入る予定の「ホームセンター
コーナン新大阪センイシティー店」
そして、同社は6月に現在の堺市から、大阪市内の新大阪に本社を移転する。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。世の中が不況の時に力を発揮し、身近な生活をより豊かにする商品を、全国各地の顧客に届けている。筆者が生まれた1978年に、ホームセンターの1号店をオープンした同社。コロナが終息した暁には、疋田直太郎社長にインタビュー取材を申し込むつもりだ。これからも頑張れ、コーナン。