商業施設新聞
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No.754

コロナで変わっていく経済


山田高裕

2020/4/28

 筆者はここ数日、食品を買うために30分ほど外出した以外はほとんど家の外に出ていない。いうまでもなく新型コロナウイルスのためだ。あまり積極的に旅行などをする方ではないが、それでもこんな生活は以前であれば考えられなかった。こうした生活様式の変化により、必然的に企業の業績についても影響が出てくる。経済全体としてみれば圧倒的に悪影響の方が強いが、今回はあえて利益増、需要増をもたらしている業界や業種、新たな試みなどを見ていきたい。

 利益を得た業界として真っ先に挙げられるものは、食品スーパーやドラッグストアなどの生活必需品を扱う小売業だ。まずドラッグストアは衛生用品の需要が格段に増しており、例えばウエルシアホールディングスの3月売上高は対前年比で6.1%の伸びを見せた。買いだめのほか、休校や外食店の休業などで食料品の需要が増加しているため食品スーパーも好調で、ライフコーポレーションの3月売上高は対前年比で6.9%増加している。ネットスーパーの売り上げについても、今回の事態を機に弾みがついているようだ。

 在宅勤務の拡大を受けて、関連する業界にも利益が及んでいる。例えば在宅勤務体制の構築のため、Webカメラやカメラ付きノートPCの需要が増加しているという。先週訪れたPCショップでは在庫切れの商品などもあり、需要が増えていることを実感した。また在宅勤務のほか、家で1日中ネット配信の映画などを見て過ごす人が増えたことで、配信事業者や通信インフラも需要が増加しているようだ。

 製造業においても、自動車や鉄鋼などの重工業が軒並み不調になる一方で、5Gなど通信インフラを支える電子部品や、職場のクラウド化で高まるサーバー需要を支えるメモリーなどは好調なようだ。また既存の製造設備やノウハウを活かす形でマスクや人工呼吸器の生産に乗り出す企業も出てきている。こうした面からも、これがこれまで経験したようなただの不況ではないことがうかがい知れるだろう。

テイクアウトで客にアピールする外食店
テイクアウトで客にアピールする外食店
 そして今回の事態で特に被害を受けている、外食や宿泊業界においても、様々な策を採り変化している状況がある。外食業界において一番目立つのはテイクアウト化で、元々テイクアウトをやっていたチェーン店だけではなく、個人店や高級店までもが対応している状況だ。ホテル業界においても、この在宅勤務・テレワークの拡大を受けて、ホテルの客室で仕事をするためのテレワーク用一時滞在プランを売り出す施設など、様々な策を講じている。

 こうした策は、飲食店は食事をする場所、ホテルは宿泊する場所というそれぞれの業種の根本にある概念を否定するものであり、導入する側としても色々と苦しいものがあるだろう。しかし、現状でわずかでも被害を抑えて生き残るためには、こうした状況に対応する策が必須ということだ。いつこれが終わるのか全く分からないが、差し当たっては今伸びている業種や新たな試みの情報を常に取り入れ、参考にしていくしかない。
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